強豪校に進めば500万円以上の費用が…

上記以外でも、試合用ユニホームや、クラブの月謝、遠征費などのランニングコストもかかる。野球はサッカーやミニバスに比べ、そろえなければならない用具が多く、金銭的負担はどうしても増してしまう。

中学や高校に上がるタイミングで、軟式から硬式へと変更すれば、グラブも高価な硬式用に買い替える必要性が出てくる。刺繍入りのジャージーやバッグなど、チームおそろいのものは半ば強制的に購入せねばならず、そのたびに保護者の財布を直撃する。高校で他県などに野球留学をさせた場合は、3年間の授業料などの他に寮費や交通費など、途方もない金額が飛んでいく。

息子を九州の中学から関西の野球強豪校へと進学させた父親は、ため息交じりに当時を振り返る。

「入学金や学費、寮費だけでも3年間で500万円以上かかりました。驚いたのは入学前ですね。学生服寸法、野球部の説明会、メディカルチェックなどが別日にあって、そのたびに親子で新幹線に乗っていくので、それだけで数十万円飛んでいきました。仕送りのほかに、体を作るためにプロテインを送っていたのですが、1カ月半ほどでなくなるので、プロテイン代も馬鹿になりませんでした」

筆者撮影
「ジャイアンツカップ」で使用された低反発バット。柵越えの本塁打は8から1に激減し、「木で打ったほうが飛ぶんじゃないか」と証言する指導者もいたほどだった

もちろん、野球留学は特殊な例で、近隣の高校であればそこまで金額はかからないだろう。しかし、子どもが野球に力を入れるほど、お金がかかる。子どもも親の財布事情を敏感に感じとり、強豪校進学の夢をあきらめたり、中には競技自体を辞めてしまったりするケースすらある。

子供の運動機能を発達させる要素が詰まっている

高校によっては、学費などが優遇される特待生制度もあるが、1学年5人以内の規定があり、野球の技術や学力も伴わなければ、そこに食い込むことは難しい。金銭的理由で野球人口が減り、将来的に開花するかもしれない才能の芽が摘まれることほど残念なことはない。

野球は日本スポーツ界のレベル底上げにも寄与してきた。打つ、投げる、走るなど、全身を使って色々な動作を習得する必要なので、運動機能が急速に発達する「プレゴールデンエイジ」(5歳から8歳)や「ゴールデンエイジ」(9歳から12歳)に野球をやることで、体内にさまざまな神経回路を複雑に張り巡らすことができる。その結果、野球やソフトボールから他競技に転向して成功した選手が何人もいる。一例ではあるが、まとめてみた。

サッカー:本並健治、北澤豪、宮本恒靖、城彰二、田中隼磨
ラグビー:大野均、稲垣啓太、姫野和樹
バスケットボール:八村塁
ゴルフ:尾崎3兄弟(将司、健夫、直道)、高山忠洋、古閑美保、渋野日向子
マラソン:瀬古利彦、大迫傑
やり投げ:村上幸史
クリケット:木村省吾
大相撲:稀勢の里、出羽ノ城、湘南乃海
プロレス:ジャイアント馬場、棚橋弘至、田村ハヤト