「三輪EV」でインドを攻める日本ベンチャー

もっとも、小さな車両は日本規格の軽自動車だけではない。日本とは異なり、インドやタイ、インドネシアをはじめとするアジアでは、三輪車が数多く走行している。

エネルギー効率の高さを特徴とするEVは内燃機関と比べて機構が単純なだけに、小さくて軽く低速での短距離輸送に利用される三輪には、さらに適している。

スタートアップのテラモーターズ(東京都港区)は、14年に参入したインドのEV三輪車(Eリキシャ)市場で上位5社以内の先頭集団に入っている。

「市場は急成長し、上位5社で頻繁に順位が入れ替わっています」と、テラモーターズの上田晃裕社長。

もともとEリキシャは、鉛電池を駆動源にインドで自然発生的に作られたEV。時速25キロメートルに走行速度が制限されている「L3」と呼ばれるセグメントに入る。ラストワンマイルを担うが、補助金が支給されるリチウムイオン電池搭載車も増えている。

Eリキシャは、19年度(4月~3月)で約10万台の市場規模があった。コロナ禍に入った20年度も横ばいだったが、21年度は約14.7万台、22年度は約31.5万台と急伸。23年度も場合によっては、「40万台の規模に成長する」(上田氏)という。

日本を超える“自動車大国”のインド

タイなどと同様に、もともとインドではガソリンエンジンの三輪車が多く走っていた。時速55キロメートルまでの走行が許される「L5」と呼ばれるセグメントで、中長距離用だ。コロナ前までは年間約80万台が国内生産され、このうち20万台がアフリカに輸出されていた。しかし、コロナ禍の影響から20年度には販売が20万台程度に激減してしまう。

逆にEVであるEリキシャの販売は伸びたわけだが、最近ではL5のEVも登場している。21年度の販売台数は9142台だったのが、22年度には約2.6万台と、まだ規模は小さいながら3倍近くに拡大した。L5には鉛電池搭載車はなく、最初からリチウムイオン電池搭載車で始まっている。

写真=iStock.com/naveen0301
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上田氏は「インドにおける三輪車のEV化比率は現在、50%に達しています。
そもそもEVは、Eリキシャのような小さくて軽量な車両に向きます。インドの場合は、都市部の大気汚染が深刻で、EV化を進める必要がある」と話す。

インドの自動車市場(四輪)は、2022年に日本を抜いて、アメリカ、中国に次ぐ世界3位に成長した。22年に日本420万台に対しインドは472万台だった。暦年ではないが、インドにおける22年度の四輪車のEV販売台数は約4.2万台。前年度の約3倍に拡大したが、ガソリンやディーゼルエンジン車が圧倒しEV化率は1%未満だ。