ガソリン代の3分の1で同じ距離を走行できる

現実に、昨年6月に発売された日産と三菱自工が共同開発した乗用の軽EVはともにヒットした。日産「サクラ」は今年10月末までに5万4000台、三菱自工「ekクロスEV」は同11月までに1万846台が、それぞれ販売されたのだ。

「ミニキャブEV」は、三菱自工が2011年12月に発売したわが国で唯一の軽商用EV「ミニキャブ・ミーブ」を大幅に改良したもの。

筆者撮影
三菱自動車工業が21日に発表した軽商用EV(電気自動車)の「ミニキャブEV」

電池はGSユアサと三菱商事、三菱自工との合弁会社「リチウムエネジージャパン」(滋賀県栗東市)がつくる、マンガン正極のリチウムイオン電池。

電池容量は20kWh、一充電での航続距離は180km(WLTCモード)。従来の「ミニキャブ・ミーブ」が16kWh、同133kmだったので、容量で約25%、航続距離では約35%、それぞれ向上させた。それでいて、価格は2シーターが従来と同じ243万1000円、4シーターが同3万3000円高い248万6000円(いずれも税込)と、ほぼ据え置いた。

また、ガソリンエンジンの一般的な軽商用バンの燃費を1リッター当たり15kmとすると、15km走行するのに要するガソリン代は現在でおおむね170円。
これに対し「ミニキャブEV」の場合、電気代を30円/kWhとして計算すると、15km走行するのに要する金額は49.9円。ほぼ3割となる。

日本の軽は「新興国で通用する最高のエコカー」

「ミニキャブ・ミーブ」が発売された12年前なら、わが国はEV市場の先頭を走っていた。日本の量産型EVは、09年夏に発売された三菱自工の「i-MiEV(アイ・ミーブ)」、とスバルの「プラグイン ステラ」と、いずれも軽から始まった。翌10年末には日産はCセグメントの「リーフ」を発売。まさに、日本メーカーは世界のEVを牽引していた。

しかし、現在の日の丸EVは、米テスラやBYDなどの中国メーカーの後塵を拝してしまっている。レースに敗れた原因は複数あるものの、これらは普通サイズ、あるいは大きなサイズのクルマにおいての敗戦である。

軽をはじめ小さなクルマの戦いは、これからだ。

三菱自工に続き、各社から軽商用EVが来春までに発売されていく。さらに、「ミニキャブEV」は、インドネシアでの現地生産が始まっている。電池は、日本で生産したセルを現地でモジュールに組み立てられている。

「軽自動車は、日本にだけしかないガラパゴス」とする意見がある一方、「安全性が高い軽規格は、世界でも通用するはず」とする意見は根強い。

現に、インドで約4割のシェアを持つスズキの鈴木修前会長はかつて、「小さなクルマでいいのです、アジアは。身体の大きさは日本人と変わらないのですから。アメリカやヨーロッパの身体の大きな方とは違う。日本が作った軽自動車は、新興国で通用する最高のエコカー」と筆者に話してくれた(プレジデント2012年10月15日号)。

軽の商用EVが、インドネシアで受け入れられるのか否か、試されていく。