毒親に育てられた人は、今どのような人生を歩んでいるのか。ノンフィクション作家の中村淳彦さんの著書『私、毒親に育てられました』(宝島社)より、団塊ジュニア世代の52歳、美衣さんのケースを紹介する――。(第1回)

「お前、ソープに沈めるぞ」

小学6年生になると、ヤクザの借金取りが激しくなった。

毎日、誰かしらが土足で家に上がって怒鳴り散らしている。母親はヤクザに「お前、ソープに沈めるぞ」と脅されていた。

現在、日本の後進国化によって女性たちの売春は常識となってしまったが、昭和の時代は「ソープに沈めるぞ」という文句は、一般的な市民に対してなによりの脅しだった。

両手で顔を覆う女性
写真=iStock.com/Kayoko Hayashi
「お前、ソープに沈めるぞ」(※写真はイメージです)

「母親は『ソープに行けって言われた』って私にマウントを取る。お前と違って女としても魅力があるってマウント。私はもう施設に入りたかった。ネットがない時代なので、施設がどういうとこかわからないけど、家と母親から離れたかった」

「ソープとかヤバいところ」に売られると思った

「施設に入りたかった一番の理由は、母親はヤクザに『ソープに行け』って言われて喜んでいて、これは時間の問題で自分が売られると思った。だから、施設に入りたいって思ったんですね」

「どう考えてもこのブスなおばさんの母親より、未成年の自分に商品価値があるだろうなと。いずれ、ソープとかヤバいところに両親に売られると思った。そうなったら、本当生きて帰れないなって震えた。だから施設に入りたい。どうして父親のせいで、関係ない私が売られて死ななきゃいけないのよって思った」