大学病院が3つ以上ある都道府県ほど平均寿命が低い
たとえば高血圧でありながら、軽い糖尿病もあり、コレステロール値も標準値オーバーで、頻尿症状も抱えているという場合、大学病院では循環器内科で血圧を下げるための降圧剤とコレステロール値を下げる薬が処方され、内分泌代謝内科で血糖値を下げる薬が処方され、泌尿器科で膀胱収縮を抑える薬を処方されるでしょう。
各臓器の状態が正常に戻っても、これでは薬の多剤併用の副作用が出てしまいます。
短期的な有害事象だけでも、薬が6種類以上の場合、15パーセントの患者さんに出るというデータがありますが、長期的な弊害ははるかに多いとわたしは見ています。
実際、愕然としてしまうようなデータもあります。
1965年に47都道府県を対象におこなわれた平均寿命を調べる調査では、東京、大阪、福岡、愛知、神奈川といった大学病院の多い県が上位を占めていたのですが、その後、その順位はどんどん下がっていき、今では大学病院が3つ以上ある都道府県ほど平均寿命が下位になっています。
先にお伝えしたとおり、大学病院で臓器別診療を開始したのは70年代の話です。大学病院が多い県では、近隣の大病院や開業医もその影響を受けやすいのでしょう。
働き盛りが終わったら、快適に過ごせる医療を求める
逆に、地域医療が盛んで大学病院の影響の少ない長野県などは、男性の平均寿命が日本のトップに躍り出た1990年以降、平均寿命は常に日本のトップクラスで、ひとり当たりの老人医療費も常に最低レベル(つまり、県民が健康)の常連です。
つまり「臓器別診療」という大学病院のスタイルは、高齢者には基本的にフィットしないことを物語っているのです。
長年にわたり思い描いてきた理想の医学を目指して専門医の育成に励んできたというのに、社会全体のニーズに応えることができなかったというのは残念なことだと思います。
でもかくなるうえは、自分の身は自分で守らなくてはいけません。
もしも、あなたが働き盛りも終わったし、24時間戦えなくてもいい。
数値以前に自分がほどほどに快適にすごせたらそのほうがいいと考えているのなら、大学病院がベストだという認識を改めたほうがいいとわたしは強くおすすめします。