2000兆円あまりに達する地方政府の簿外債務

破産を申請した中国恒大だけで48兆円もの負債額である。当然のことながら外貨建て債務の再編計画の合意取り付けに時間がかかっており、再建は容易ではない。そして、恒大―碧桂園―遠洋と続く不動産大手の危機は、地方政府、保険、年金、信託、銀行へと波及し始めている。これまでデベロッパーの問題にすぎなかったものが、地方政府や年金保険などのセクターにリスクが拡大している。

大きな水たまりのある路地裏
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地方政府の「隠れ債務問題」も表に出てきており、2000兆円あまりの簿外債務が大きな問題になっている。これはサブプライムのSIV(ストラクチャード・インベストメント・ビークル)(※)を利用した債務の簿外化と同じで、デフォルトするとそれが地方政府の債務となる。この時限爆弾をリセットすることは、もはや不可能な段階になっているのだ。

※リスクの高い証券化商品などを連結決算外で運用する目的で、大手金融機関やヘッジファンドが傘下に設立する特別目的会社(SPC)

日本のバブル崩壊時に似た手形のキャッチボール疑惑も

どんなに額面資産があっても、実際にカネが動かせなければ債務は返済できない。国内向けは何とかなっても、海外向けは誤魔化しがきかない。

中国恒大などデベロッパーの外貨建て債券のデフォルトが始まっていた状況から、中国政府は価格統制の緩和を行ない、債券売買が成立する環境をつくったが、それでも買い手がいない。特に碧桂園は米ドル建て債券の利払いの履行が危ぶまれるほど財務状態が悪化しており、他のデベロッパーも似た状態にある。当然、そこにかかわる建設業者や資材納入企業にもその影響は及ぶ。

破産申請前の中国恒大だけで、債務履行などに関する訴訟が6兆円規模に達していた。それだけ手形が落ちなかった人がいるということで、もし、裏書(一種の連帯保証)していれば、裏書人に支払い責任が生じる。

また、企業間で支払いのために手形をキャッチボールしているものと思われ、どこかが飛べばその裏書人も連鎖して“飛ぶ”ことになる。これは日本のバブル崩壊時によく見られた現象である。2024年以降も「恒大ショック」の影響は多方面に及ぶだろう。