遺伝子が近い個体を繁殖させない

冒頭のミルクとヒビキのケースも、こうした取り組みの一つだ。

レッサーパンダの計画的な管理を担当する日本平動物園(静岡市)の獣医師、松下愛さんは「とにかく遺伝子が近い個体を繁殖させないように。少なくとも2代先まで見据えて計画しています」と語る。

相手の候補が10頭ほどになることもあるが、その場合も10頭すべての血統的な背景までみて決めるという。

茶臼山動物園に移ったミルクは、めでたく繁殖に成功。21年7月1日、ヒビキとのあいだに2頭のメスの赤ちゃんが誕生した。

こうした努力や全国の動物園の協力もあり、国内のレッサーパンダは順調に増えてきた。

松下さんによると、国内では飼育できるスペースがなくなってきたことから、「さらに増やすというのではなく、遺伝的多様性を保ちながら頭数を維持する段階」だという。

「希少動物」を輸入しにくくなっている

JAZAが現在のようなコレクションプランをまとめるようになったのは、2015年からだ。

1980年代からあった前身の種保存委員会を発展させる形で、2012年に生物多様性委員会を発足させ、よりシステマチックに、そして将来を見据えた形で、動物種を整理する現在のJCPをまとめるようになったという。

生物多様性委の副委員長に就いて以来、JCPの運営、差配にあたる佐藤哲也さん(16年から同委委員長)はこう説明する。

「日本がワシントン条約を1980年に批准して以降、希少動物を輸入しにくくなっています。動物園で展示する希少動物は、放っておけばいずれいなくなってしまう。そうならないよう、繁殖して世代を重ね、後世に残すことを考える必要があります。動物、人材、施設、資金、いずれもリソースが限られています。その有効活用のために『コレクションプラン』が必要でした。

遺伝的多様性を確保した繁殖には、時に動物を他園に移動することも必要です。『市の財産を他園に移動することはできない』『勝手なことをされても困る』といった意見も寄せられますが、粘り強く説得するしかありません。そんな中、繁殖に成功したという知らせがくると、『後世への責任が果たせた』と思い、うれしくなる」

象
写真=iStock.com/Zocha_K
「希少動物」を輸入しにくくなっている(※写真はイメージです)