偏差値30台の教育困難校でも導入

偏差値30台でいわゆる「教育困難校」と呼ばれる高校の先生が、R80を知ってすぐ自分の授業で取り入れてくれました。

ただ、勉強で苦労してきた生徒ばかりです。授業の振り返りを80字で書けと言われても、すぐには難しそうですよね。

その先生が素晴らしかったのは、R80の使い方にひと工夫したことです。

まずは教科書を見ながら書いてもいいことにして、それを提出させ、添削するということを繰り返しました。

ノートや教科書で一生懸命勉強する人の手
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

難易度を下げて場数を踏ませたことで、徐々に教科書を見ないでも振り返りをスラスラ書けるようになっていったといいます。

考案者である私は、進学校ではスムーズに導入できるだろうと踏んでいたのですが、教育困難校で使えるかどうかは未知数だと感じていました。

ですから、教育困難校の先生から報告を受けた当初、正直に言うと、本当にみんなが書けているのかなと思ってしまいました。

その心を見透かされたのか「中島先生、ぜひ見にきてください」と誘われました。

いざ見学させてもらうと、生徒たちは目をキラキラさせながら授業(日本史です)を受けています。

そして最後に「じゃあ、いつものようにR80ね」と先生から言われると、ためらいなく一斉にR80を書き出したのです。

彼らの姿に感動して、思わず胸に込み上げるものがありました。

彼らの日本史の成績はうんと上がりました。

学習の振り返りを続けた効用ですね。でも、それだけではありません。

就職活動の志望理由書がスラスラ書けた

先生いわく、生徒たちはR80についてこう口々に言うのだそうです。

「自分は文章が書けないと思っていたけど、書けるようになってうれしい!」

この学校の生徒の多くは、進学ではなく就職を希望します。

就職活動では、志望理由書を書かないといけません。

ただ例年の生徒たちは、自分の言葉でうまく書けずに四苦八苦していたといいます。

ところが、R80を続けてきた生徒たちは、400字ほどの志望理由書を上手に書くことができたのです。

前年度までの生徒とのあまりの違いに、学年主任がビックリして「一体なぜこんな文章を書けるんだ⁉」と生徒たちに問いただします。

彼らが理由に挙げたのがR80でした。そのうち1人がこう言ったそうです。

「400字だってR80を5回ですよね」

そう、この言葉は、教育困難校の生徒さんが語ったことだったのです。

私もこの時点(R80を発表した最初の年度でした)では持ち合わせていない視点でした。

R80は80字だけでなく長文を書けるようになるのだと、この生徒さんから教えてもらったのです。