「保育園に入りにくい区」1位は江戸川区

まずは、区ごとの数字を確認しておこう。「子どもを保育園に入れやすい区」の1位は千代田区で、倍率は2.32倍となる。前述のように、小学校前の児童の半数は保育園入園を希望しないため、実質的な倍率はその半分の1.2倍程度となる。そう考えると、希望すれば認可保育園に8割ほどが入れる状況にあり、認可外まで含めると全員入れると考えられる。これは「保育園天国」と言ってもいいだろう。

一方、倍率が最も悪いのは断トツで江戸川区であり、7.85倍にも及ぶ。都区部平均は3.28倍なので、その高さがうかがえる。江戸川区は総じてどの駅でも認可保育園倍率は高い。独自の保育ママ制度で0歳児保育をサポートしているが、区全体の保育ママは126人で、同区の推計0歳人口の4527人に対して絶対的に足らないので、充分に機能しているとは言い難い。

また、このランキングでワースト5に入った大田区・江東区・荒川区・台東区は2022年に「待機児童人数ゼロ」となっており、行政発表のイメージとはかなり異なることがわかる。

7位の世田谷区と8位の墨田区はわずかながらではあるものの、待機児童数がいることが発表されているが、本結果とはかなり違う。

【図表】東京都区部 0歳児の認可保育園に入りにくい行政区ランキング
画像提供=住まいサーフィン

人の移動が西から東へ、郊外から「都心寄り」に変化

8位までの結果で6区が城東に位置している。これには人の移動エリアの変化が理由にあると思われる。移動人口の年齢は20代が圧倒的に多い。20代が1人暮らしをする際の最大の理由で半数超の52%を占めるのは通勤・通学の時間短縮であることは、独自のアンケート調査から分かっている。現在はオフィスも学校も都心に集中して存在する。

30代以降の移住エリアもひと世代前と比較して都心からさほど離れなくなっている。その理由は1世帯の人数が減少し、共働きが増えているからで、職場へのアクセスを重視しているからである。世帯人員の減少は都心回帰を起こすもので、不動産価格が上がると世帯は郊外に行くというバブル期にあった「ドーナツ化現象」は過去のものでしかないことは理解しておく必要がある。

2013年に始まるアベノミクス以降の不動産価格の高騰は、単純な郊外化ではなく、世田谷区を代表する城南地域よりも不動産価格が相対的に安い江東区を代表する城東地域への人の移動を助長している。4人ファミリーには城南で一戸建てがいいかもしれないが、3人ファミリーには城東でマンションの方が選好されているというニーズの変化でもある。