水に浮く野菜と沈む野菜の違いは何だろうか。静岡大学農学部教授の稲垣栄洋さんは「予想を立てながらさまざまな野菜を水に入れ、浮くかどうかを試す小中学校向けのプログラムがある。その実験を進めると、浮く野菜、沈む野菜にはそれぞれ共通点があることに気付く」という――。(第1回/全3回)

※本稿は、稲垣栄洋『雑草学研究室の踏まれたら立ち上がらない面々』(小学館)の一部を再編集したものです。

さまざまな野菜
写真=iStock.com/cattosus
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浮く野菜と沈む野菜

主体的に考える授業って、どんな授業なんだろう?

雑草学研究室の学生、瓜成うりなりさんは、「小中学校の探求的学習に、校庭の雑草が活用できるのではないか」と考えていた。

悩む瓜成さんに、私は、あるプログラムを紹介してみることにした。

それは私が食育をやっていたときから懇意にしているM川大学のF先生が発案したプログラムだ。

「確か、この辺にあったはずだけど……」

私は、実験室の奥に、水生雑草の実験をするときに使った水槽があることを確認すると、瓜成さんにこう言った。

「明日、また来てくれる? それまでに準備しておくから」

次の日、私はスーパーマーケットでたくさん野菜を買ってくると、水槽にたっぷりと水を入れておいた。

これで準備はOKだ。

約束の時間になると、瓜成さんがやってきた。

「それじゃあ、さっそく始めよう」

私はスーパーの袋の中から、ピーマンを取りだした。

「ピーマンは水に浮くと思う?」
「浮くと思います」
「じゃあ、やってみるよ」

私はピーマンを水に浮かべてみた。ピーマンは水に浮かんだ。

「浮かぶよね。じゃあ、サツマイモは?」
「沈むと思います」

サツマイモを水に浮かべようとすると、サツマイモは沈んでいった。

これは、浮力を学ぶためのプログラムである。

たとえば、サツマイモを小さく切ったら浮かぶだろうか?

浮かぶか沈むかは、大きさではなく、比重の問題である。そのため、小さく切っても沈むものは沈む。

予想を立てながら実験する

ところが、F先生のプログラムは、浮力を学ぶだけにとどまらない。

たとえば、キャベツは浮かぶだろうか?

それでは、カボチャはどうだろう。ブロッコリーはどうだろう。浮かぶだろうか?

こうして、予想を立てながら、野菜が浮くかどうかを試していくのである。

身近な野菜に興味を持つとともに、「主体的に考える」ためのプログラムでもあるのだ。

これが、F先生の「野菜の浮き沈み」というプログラムだ。まさに、このプログラムは、子どもたちが仮説を立てて、検証することの繰り返しになっている。

「次はこの野菜を試してみたい!」と好奇心は高まり、子どもたちは主体的に活動を行っていく。

ちなみにキャベツとカボチャとブロッコリーは浮かぶ。

サツマイモやニンジンは沈む。

それでは、浮く野菜と沈む野菜の共通点は何だろうか?