関係者が群がる「利権の巣窟」

今年6月時点でベトナム人実習生は約19万人まで増えている。1人100万円の手数料を支払っていれば、総額で1900億円である。「利権」の大きさがわかってもらえるだろう。この莫大ばくだいな金を送り出し業者が集め、そこに日本の監理団体やベトナム政府の関係者が群がっている。

現状はベトナム人実習生にとって不幸である。彼らの失踪は、不法就労のみならず犯罪をも誘発しかねない。

日本社会にとっても好ましくない。手数料問題が解決されないのなら、ベトナムからの実習生受け入れを一時停止することも考えるべきではないか。

韓国では日本の実習制度に似た「雇用許可制」のもと、16カ国から昨年末時点で約37万人の外国人労働者が就労しているが、ベトナム人の主な送り出し地域である北中部4省からの人材の受け入れは一時停止している。失業や不法就労が多いからだ。

ちなみに、雇用許可制を使い韓国で働くベトナム人は3万人に満たず、日本のような「ベトナム人頼み」にはなっていない。一時停止の措置は、長期的に見れば実習生たちのためにもなる。だが、最終報告にそんな指摘はない。

ベトナム人の受け入れが止まれば、実習生の数が確保できなくなる。結果、実習生頼みの企業、業界から不満が噴出することを恐れているのだ。

背後に見え隠れする「大物政治家」たち

さらに言えば、日本がベトナムに気を使う背景には、大物政治家たちの存在も影響しているのかもしれない。

超党派の「日本ベトナム友好議員連盟」会長を長年務めるのは、安倍晋三、菅義偉両政権下で自民党幹事長を担った実力者・二階俊博氏である。そして岸田文雄首相も同連盟で長く活動し、幹事長まで務めてきた。岸田政権発足後、初めて日本へ招いた外国首脳もベトナムのファム・ミン・チン首相(当時)だった。

こうした“親越派”政治家への忖度そんたくもあってか、実習制度見直しを託された有識者会議には「ベトナム問題」解決への本気度が感じられない。現制度への批判に対し、「何かやってる感」を出そうとしているだけなのだ。

しかし、現状を放置していれば、ベトナムから日本への出稼ぎ希望者は確実に減っていく。他国の賃金が急上昇している中、多額の借金までして「稼げない日本」など選ばないからだ。

政府としては、実習制度の看板をかけ替え、実習生の転籍制限を緩和すれば、国内外からの批判が収まると考えているのかもしれない。ただし、その裏では、現制度最大の闇である「ベトナム問題」は今後も引き継がれていく。

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