キャリアを積んだ40代・50代の独身女性の中には、「結婚したいという思いがあっても、そもそも婚活をする時間がない」という人が少なくない。職場では管理職として部下や後輩から頼られ、実家では高齢の親に頼られている。アラフォー・アラフィフ専門婚活カウンセラーの伊藤友美さんは「こういう人は責任感があり、器が大きくて人間的には魅力的だが、自分のことをあと回しにしてしまいがち。そのままだと、婚活はうまくいかない」という――。

「忙しすぎて婚活できない」のウラにある本音

ズルズルと婚活を続けてしまう「婚活沼」にハマるアラフォー・アラフィフ女性は少なくない。今回は、「結婚したいと思いつつ、仕事が忙しすぎて婚活ができない」と相談所を訪れた女性の事例を紹介する。キャリア女性にはこういう人が多いが、じつは婚活ができない理由は、「忙しい」からではないのだ。

※プライバシーを考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

総合病院で看護師長を務めているJ子さん(52歳)は、しっかり者で責任感の強い女性だった。職場では、患者さんのために駆け回り、後輩のフォローも進んで買って出る。

プライベートでは、年金暮らしの両親と同居していた。自宅は、J子さんが40歳の時に両親と自分のために購入した一戸建て。80代の両親は介護が必要な状態ではないが、ひとりでできないことが増えてきており、何かと娘を頼りにしていた。仕事が休みの日は持病がある父親の病院へ付き添ったり、車を出して母親の買い物に付き合ったりという感じだ。

とはいえ、洗濯や炊事は母親がやってくれるので、忙しいJ子さんは助かっている面もあった。「家に帰れば温かい食事が待っているのは、ありがたいですよね」と語っていたJ子さん。趣味のクラシック音楽を聴く時間もほとんどないくらいで、仕事と両親の相手で精一杯という日々を送っていた。

入院が結婚を考えるきっかけに

そんなJ子さんが「婚活をしよう」と思い立ったのは、自身の入院がきっかけだった。体調を崩して1週間ほど入院したときに、「自分はひとりぼっちだ」と感じたという。高齢の両親は、病院まで面会に来ることができなかった。同室の患者さんのベッドには次々と家族が訪れるのを見ながら、「私は、このままずっとひとりで生きていく人生でいいの?」という疑問がわき上がってきた。

J子さんは、これまでに恋愛経験がほとんどなかった。仕事を始めてからは、職場に女性が多いうえに、忙しすぎて「さみしい」と感じる余裕すらなかったのだ。けれど、入院して初めて、ベッドに寝転びながら「このまま女性として誰にも愛されないまま、人生を終えるのはいやだ……」と思ったという。

「人に甘えられるばかりではなくて、私にも甘えられる人がほしい……」と。

病院のベッドに座り、外を眺める女性の後ろ姿
写真=iStock.com/Boyloso
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J子さんは多忙な仕事のストレスと不規則な生活が原因で、知らないうちに体重も10キロ以上増えてしまっていた。「もうこの歳だし、しかたないよね」と自分に言い聞かせていたが、退院してしばらくした頃に、職場の60代の女性が突然ピアスを開けてきて、こう言ったのだという。「できるうちに、やりたいことはなんでもやっておかないとね」と。

その言葉にハッとしたJ子さんは、「婚活をしよう」と思ったという。まずしたことは、ダイエット。食事の時間と内容を見直すことで、半年ほどで体重を戻すことに成功した。しかし、婚活はなかなか思うように進まなかった。その理由を、「婚活をしたくても、忙しくて時間がないせい」だとJ子さんは語っていた。果たして、本当にそうだろうか。