最近は男の子に「男女不明の名」が多い

聞いただけでは性別が判別できない「男女不明の名前」というのは、昭和のころにもあった。「一人暮らしの時に表札に書くのに安全だ」といって、女の子に男女まぎらわしい名前をつけようとする親がよくいたのである。それならば、表札は名字だけを書き、「猛犬注意」の貼り紙をしたほうがマシで、本名を男女まぎらわしくして表札に書く必要はない。

一方、最近では、性別が逆転した名前や「男女不明の名前」は男の子にばかりつけられる。女の子にもあることはあるが、それはつけられた時点では女の子によくつけられていた名で、のちに男の子につけられて流行し、結果として「男女不明の名」になってしまったケースが多い。

今回のベスト10の名前だけみてもそれはわかる。

例えば碧(あお)は、90年代にミドリと読む女の子の名前として人気が出てきた。暖(だん)は、2000年代にハルと読む女の子の名として人気が上昇した。凪(なぎ)は2020年以後に女の子に増えてきた。

これらはみな、はじめは「女の子の名」だったのである。

蒼の場合ははじめから、ソウと読んで男の子に、アオ、アオイと読んで女の子につけられた。朝陽(あさひ)、律(りつ)もはじめから男女両方につけられていた名前である。

ベスト10に入るような名前は当然人数が多い。そのうち男女不明の名は男の子の名には6つもあるが、女の子の名にはひとつもない。8位の葵(あおい)は最近は男の子にもつけられるが、もともとは「女の子の名」である。

公園でサッカーボールで遊ぶ2人の子ども
写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA
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これはドラマ『silent』の登場人物名か?

今回人気順位の上がった「紬」「湊斗」「想」の名は、人気ドラマ『silent』の登場人物名からとった名づけではないかといわれる。この指摘は多分正しい。なぜなら、「紬」「想」は、以前は特に大人気といえるほどの名ではなかったのが、急にベスト10に入ったからである。

ソウ、ミナトは、呼び名自体は以前から人気はあったが、圧倒的に「颯」「湊」の1字でつけられていた。今回、「想」「湊斗」という書き方がいきなり上位にきたのは、明らかにドラマの影響と思われる。

ところで、このドラマの登場人物の名前は、みなその人が生まれたころに人気だった名前で、名前と年齢が合うようによく考えられている。

ちなみに想の字は、相(目で見た木のかたち)と心を合わせ、心に形を思い描くことである。偶然なのか、意識的にそうしたのかはわからないが、難聴のため目で見る形だけが頼りである主人公の生きざまと重なっている。