2012年11月2日(金)

居酒屋で「お通し代」の支払いを拒否できる法律トーク、教えます

生活とお金の損得【お通し代】

PRESIDENT 2011年12月19日号

著者
村 千鶴子 むら・ちづこ
弁護士

1953年、愛知県生まれ。東京経済大学現代法学部教授(消費者法)。国民生活審議会消費者契約に関する検討委員会委員などを務める。著書に『消費者トラブル 手口と対応策』(あさ出版)などがある。

弁護士 村 千鶴子 構成=田中裕康
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居酒屋に入ると、小皿などの一品料理、いわゆる「お通し」が出てきます。注文していないのに店側が出してきたものに対して、支払いの義務があるのでしょうか。

お通しは、一種の「席料」と捉えることができます。料亭などの席料をとってしかるべき高級店ならば、お通しは支払って当然となるでしょう。一方チェーン展開の居酒屋など明朗会計を謳っている大衆店が、頼んでもいないものを勝手に出してお金をとるのは、常識に照らして違和感があります。

万が一、「お通し代」を払うか否かで裁判になったとしたら、最終的には裁判官が席料をとって当然と考えられる店かそうでないかを判断することになるでしょう。

トラブルになりやすいのは、「席料」が発生するかどうかが微妙な、高級店と大衆店の中間ランクの店でしょう。その場合、もしも無料だと思って食べてしまっても、メニューに「お通し」が有料で明記してあった場合は支払わざるをえないでしょう。

またメニューに記載がない場合でも、お通しを食べてしまってから、無料だと思っていたから払わない、というわけにはいきません。有料と明示されているわけではないので契約は成立していないといえますが、食べて利益を得ているので、利益分を支払う必要があると考えられます。

ですから、通常は席料などとらないだろうという店でお通しが出てきたら、「これは無料ですか」ときちんと聞く必要があります。

お通しは日本独特の商慣習の名残といえるかもしれません。明治以前は、客がお店に「こういうものが欲しい」と伝え、店が相手の身分や身なりを見て「これはいかがですか」と品物を出すのが日本における通常の商慣習でした。あらかじめ商品の値段が決めてあって、客がそれを見て買う、という買い物の仕組みではなかった。飲食店で店が勝手に出す「お通し」は日本独自の慣習といえるでしょう。

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