言語重視学習は意味重視学習より7倍効率的

イスラエル・ハイファ大学のバティア・ラウファー氏は、アラビア語を母語とする高校生(16歳)を意味重視学習と言語重視学習に割り当て、英単語がどのくらい学習されるかを調べました。

意味重視グループの学習者は、“Children and TV Watching”と題された英文テキスト(211語)を、辞書を引きながら読みました。テキストでは、学習対象となった10の英単語が用いられていました。言語重視グループでは、学習対象となった10の英単語のリストが与えられ、辞書で意味を調べることが求められました。その後、穴埋め問題で英単語の練習をしました。

2週間後に事後テストで学習成果を測定したところ、言語重視学習の方が意味重視学習よりも約7倍高い点数に結びついていました。この研究は、穴埋め問題を解くという機械的な言語重視の学習が、読解による意味重視の学習よりもはるかに効果的であることを示唆しています。

この結果を元に、ラウファー氏は「ほとんどの語彙ごいが読解により自然に習得される」という定説に疑問を呈しています。日本の大学生を対象に筆者が行った研究でも、言語重視学習は意味重視学習よりも約4~30倍も効果的であることが示されています。

ただし言語重視学習では使いこなし方が身につかない

言語重視学習は、効率の良い学習法です。とはいえ、言語重視学習には、学んだ知識が実際のコミュニケーションでも使用できるとは限らないという欠点があります。

例えば、「develop=発達させる、伸ばす」と暗記していると、「私は自分自身を向上させたい」と言おうとして、I want to develop myself.と言ってしまうかもしれません。しかし、developはdevelop listening skills(リスニング力を伸ばす)やdevelop the ability(能力を伸ばす)といった用法はありますが、「自分自身を伸ばす」という意味ではふつう使わず、I want to improve myself.と言う方が自然です(『日本人のエイゴ言い間違い!』アルク)。

文脈から切り離して英語を学ぶ言語重視の学習では、単語の和訳や文法ルールは覚えられても、それらを実際にどのように使うかまでは十分に身につかないことが多いのです。