海外では資産の「引き出し方」のアドバイスは当然

海外の金融アドバイスでは、資産をどう引き出すべきか、それがどんな影響を与えるかをアドバイスすることは「当然のこと」として認識されています。中でも、引き出しによる税金への影響は最も大切なポイントだともいわれています。

しかし、日本では、引き出し方に関する説明をされることがほとんどありません。これは、日本では長らく、退職後に預貯金を取り崩しながら生活をするのが「普通のこと」だと思われてきたからです。

日本の会社員や公務員はこれまで、まとまった金額の退職金を受け取り、預貯金を柱にした退職後の生活を考える場合には、毎月毎年、給料のように定額で資金を引き出すというアイデアを、安心感をもって受け入れてきました。そして、そのことが、「退職したらお金はできるだけ使わない」という、後ろ向きともいえる発想につながっていきました。

しかし、このところ長寿化に伴う長い退職後の時代に備えて、現役時代から資産運用を行い、それを保有して退職を迎える人が増えてきました。

結果として、保有資産が有価証券に変わってきたのに、引き出し方法は預貯金時代の「定額ルール」から変えられない人が、いまでは「資産を枯渇させる人」になりがちなのです。そして、運用する資産は運用収益率として「率」で考えるのが一般的ですが、それと同じように、引き出しも「率」を基に考えられる人が、「資産を枯渇させない人」となるのです。

1000万円を運用する2人を想定

引き出し方法の違いによる資産を枯渇させやすい人のパターンを、簡単な例で説明します。

話を単純にするために、AさんとBさんの2人を想定します。ともに1000万円の有価証券を保有して、2年間にわたってその資産を運用し続けながら、その中から少しずつ生活費を引き出すといった退職後の生活を考えます。