立ち上がるときに血圧が上がらないので、めまいが起きる

起立性調節障害があるケースでは、この2つの神経のバランスが崩れているために、血圧や脈拍を上げたり下げたりする調整がうまくいきません。本来ならば、立ち上がるときには脳への血流を維持するために一時的に血管が収縮して血圧を維持、あるいはやや高めに保とうと働くのですが、起立性調節障害があると十分な血管収縮が得られないため、血圧は上がらず、脳への血流が一時的に不十分になります。

そのため、立ちくらみやめまい、動悸どうき、起立不耐症、朝起き不良、頭痛、腹痛、全身倦怠けんたい感、気分不良、乗り物酔い、気を失うなどの症状が発生します。時には、気を失って倒れるケースもあります。

その他、無気力感、思考力の低下、記憶力の低下、成績の低下、イライラ、慢性疲労、寝つきが悪いといった症状が出ることもあります。

自律神経の調子がなぜ悪くなるのかについては、はっきりと分かっていません。原因が明確ではないために、治療法もスッキリと示すことができないというのが、起立性調節障害の特徴でもあります。

先に述べた通り、症状は起床時に強く現れるため、登校できなくなったり、登校できてもつらくて授業を受けることができずに保健室で休むような状態が起こりやすくなります。「朝に調子が悪い」というのは、不登校の初期症状と似ているため、本人は頑張って学校に行って授業を受けたいと思っているにもかかわらず、周りからは怠けやさぼりと誤解されてしまい、つらい思いをすることも多いようです。

【図表1】「起立性調節障害」自覚症状のチェックシート

思春期になりがちな病気だと理解してもらえない

また、起立性調節障害という病気そのものがあまり一般的には知られていないため、本人の困り感を学校の先生やクラスメートに理解してもらえないこともあり、二重につらい思いをすることになります。

起立性調節障害は思春期に発症しやすく、特に二次性徴が始まる時期に発症しやすい病気です。女子では、生理が始まる頃に起こりやすいといえます。

また、偏頭痛や過敏性腸症候群などの病気、自閉スペクトラム症などの発達障害との合併が多いという報告もあります。

起立性調節障害の早期発見や治療に結び付けるための資料として、2019年に岡山県教育委員会が作成した「起立性調節障害対応ガイドライン」がとても分かりやすく参考になります。このガイドラインはネット上に公開されており、誰でも自由に見ることができます。