また、今後仮にトンネル内での戦闘となれば、構造を熟知したハマスに対し、イスラエル軍は不利を迫られる。2014年のガザ戦争では、ハマスを追ったイスラエル軍がトンネル内に閉じ込められる展開が生じた。ロンドンを拠点とするシンクタンク、チャタムハウスのイスラエル専門家であるヨシ・メケルバーグ氏は、イスラエル軍は今後、バンカーバスター(地中貫通弾)を投入してトンネルを破壊することも視野に入れるだろうとの見解を示している。

数千発のロケット弾で、迎撃率96%の防空システムを破る

摸擬市街やトンネル網のほか、ハマスはさまざまな戦術で奇襲の準備を進めてきた。ロイターは、ハマスが過去2年間、ガザ地区の住民たちがイスラエル側で労働に就けることを重視しているかのように装ってきたと指摘する。

あるイスラエル軍の報道官は、「彼らが働きに来て、ガザにお金を持ってくることで、一定の落ち着きが生まれると信じていた。我々は間違っていた」と警戒の甘さを認めた。別の安全保障関係筋はロイターに対し、「ハマスはイスラエルに、戦闘の準備が整っていないという印象を与えていた」と述べ、心理戦を制したとの見方を示している。

実戦においても、開幕早々イスラエル軍を圧倒した。移動式ミサイル防衛システム「アイアンドーム」の突破では、世界最強とも名高かったシステムを、単純なミサイルの物量で機能不全に陥れた。全米日刊紙のUSAトゥデイによるとアイアンドームは、迎撃成功率96%を誇る。このシステムは、レーダーで捕捉した飛翔ひしょう体をコントロールセンターで分析。センターの指示に追随する迎撃ミサイルを発射し、高確率で打ち落とす。

10億ドル(約1500億円)を投じたアイアンドームだが、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、1台のランチャーに搭載できる迎撃ミサイルは20発に限られ、再装塡そうてんのタイムラグが生じる。これに対し、USAトゥデイによるとハマスは、20分間の攻撃で5000発を発射した。イスラエル軍は2200発と分析しているが、いずれにせよ迎撃システムのキャパシティーを超える数だ。

テルアビブ
写真=iStock.com/KingMatz1980
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6人の指揮官しか知らない“極秘計画”だった

国際戦略研究所の陸戦担当シニアフェローであるベン・バリー氏は、アラブ首長国連邦のナショナル紙に対し、「短時間に何千発ものロケットが飛んでくるのですから、それに対応できる防空システムは世界中を探しても存在しないでしょう」と語る。

加えてハマスは、作戦の秘匿にとくに慎重になっていた。ハマスから亡命した元指導者のアリ・バラケ氏は、AP通信に対し、攻撃はガザにいる6人のハマス指揮官によって計画されたものだと明かした。ハマスの最も親しい同盟国でさえ、タイミングについては事前に知らされていなかったという。

多数の犠牲者を生んだハマスの襲撃は、一見突発的な奇襲作戦にも感じられる。しかしガザ地区のトンネル内では、数年にわたる周到な準備が進行していたようだ。

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