動物が繁殖にかける執念はすさまじい。ツキノワグマ研究者の小池伸介さんは「オスのクマにカメラ付き首輪をつけて調査したところ、子グマを食べている様子が撮影された。子供を殺して母グマの発情をうながすためで、0歳の子グマの死亡原因は大半がオスによるとされている」という――。

※本稿は、小池伸介『ある日、森の中でクマさんのウンコに出会ったら ツキノワグマ研究者のウンコ採集フン闘記』(辰巳出版)の一部を再編集したものです。

アジアのツキノワグマ
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電波発信機からカメラ付き首輪に進化した調査方法

科学技術の発展とともに、クマの調査方法もどんどん進化している。私が学生のころは誤差が大きい割には追跡に手間暇がかかる電波発信機しか使えなかったが、そのうちGPS首輪が登場して人工衛星が格段に正確で時間のかからない調査を実現してくれた。そして、今ではカメラを搭載した首輪を装着できるようになったのである。

もともと、生き物にカメラを取り付けて、その生物の行動を探る調査は、「バイオロギング」と呼ばれている。カメラには加速度センサーも付けることができるので、映像だけでなく、移動するスピードから深さや高さまで記録できる。

バイオロギングは、最初はウミガメやアザラシなど、海の生き物を対象にすることが多かった。水中であれば、大きくて重いカメラが浮力で軽くなるので動物に負担がかからず、調査しやすいのである。また、ウミガメやアザラシは四肢が短くヒレ状なので、カメラを不快に思っても取ることができず、自力で外される心配がほとんどない。