ChatGPTを使うと作業が短く、満足度が高い

その際、片方のグループはChatGPTを利用し、もう片方は自分の力だけで文章を書きます。両者を比較したところ、ChatGPTを使ったグループは使わない方よりも平均37パーセント、実時間にして約10分、作業時間を減らすことができたといいます。

また仕事に対する満足度でも、ChatGPTを利用したグループはそうでない方よりも20パーセント上回りました。

マイクロソフト研究所(Microsoft Research)は、マイクロソフトなどが提供する「GitHub Copilot(ギットハブ・コパイロット)」がソフトウエア開発者(プログラマー)の仕事に与える影響を調査しました("The Impact of AI on Developer Productivity: Evidence from GitHub Copilot," Sida Peng et al., Microsoft Research, GitHub, Feb. 13, 2023)。

GitHub Copilotは様々な生成AIの中でも「コード生成AI」の一種です。これは文字通りコード、つまりコンピュータ・プログラムを自動生成する人工知能です。

この調査でも多数のプログラマーを2つのグループに分け、片方はGitHub Copilotを使って課題のプログラムを書き、もう片方は使わずに同じ仕事をしました。両者を比較したところ、GitHub Copilotを使ったグループは使わない方よりも55パーセント短い時間で仕事を終えることができたといいます。

ベテラン従業員の強みが生成AIに奪われる

また(MITによる)ChatGPTに関する調査でも(マイクロソフト研究所による)GitHub Copilotに関する調査でも、これら生成AIの恩恵を最も受けたのは、経験に富む労働者ではなく、経験の浅い労働者(概ね若年労働者)でした。つまり本来、長年の経験によって培われるはずのスキルが、生成AIによって代替されたことを示唆しています。

これは労働者側から見て、良いような悪いような複雑な結果です。

と言うのも、社会に出たばかりの若年労働者にとっては、ChatGPTのような生成AIを使えば、いきなりベテラン従業員らと同じように働くことができますから、社内での評価も高まるし、昇給・昇進も早まるかもしれません。

しかし逆にベテラン従業員、特に体力や集中力の衰えを経験で補ってきた中高年の労働者はそのアドバンテージを生成AIに奪われてしまいますから、これまでよりは不利な状況に置かれます。特に合理的で割り切った考え方をする企業であれば、(生成AIのサポートも含め)総合的に同じパフォーマンスが期待できるのであれば、ベテラン従業員よりは給与を低く抑えることのできる若年労働者を選ぶということになるかもしれません。