全米で23万部のベストセラー本を著したがん研究者ケリー・ターナー氏は、がんが劇的に寛解した1500以上の症例を分析。世界中の数百人ものがんサバイバーたちにインタビューした結果、奇跡的な回復を遂げた患者たちには、ある共通点があることがわかった。そのうちの一つが、「周囲のサポートの受け入れ」だった――。

※本稿は、ケリー・ターナー『がんが自然に治る10の習慣』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

孤独は不健康と最も強く相関する

ごく簡単に言うと、十分な社会的サポートが得られないと、あなたの健康に害をおよぼす可能性があります。実際、孤独は公衆衛生上の危機になりつつあります。

最近の研究によると、アメリカ人の約半数が、少なくとも一度は孤独や孤立、疎外感を感じており、アメリカ人の10%がつねに、またはほとんどの時間、孤独を感じていると答えています。孤独の影響は、1日15本の喫煙や肥満、アルコール依存と同じくらい寿命を縮めるということを理解するまでは、これが公衆衛生の危機とは思えないかもしれません。

孤独であることは、不健康な行動を引き起こし、私たちの健康を害する可能性があるのです。ある研究によると、社会的に孤立している人は、毎週適度な運動をしたり、1日に5皿の野菜や果物を食べると答える確率が低いことがわかりました。しかし、彼らはタバコを吸う傾向が強く、定期的にタバコを吸う人たちの間では、孤独であると禁煙が成功する可能性が低くなりました。

別の最近の研究では、フィンランドやポーランド、スペインの1万人以上を調査して、孤独が不健康と最も強く相関する変数であることが示されています。実際、孤独は、参加者の社会的ネットワークのほかのどの要素(友人の数など)よりも不健康に強く寄与していました。

研究者らは、孤独がもたらす影響として、注意力や認知力の低下、遺伝子発現やホルモンレベル、神経系や免疫系への悪影響などがあることを発見。これらの悪影響は、研究期間中に参加者が重篤な病気と診断されたり死亡したりといった、健康への悪影響の一因となりました。

興味深いことに、研究者たちは、接触の頻度が健康増進と相関する唯一の社会的ネットワークの要素である一方、社会的ネットワークの大きさや質は孤独の度合いには影響しないことを発見しました。したがって、200人の友人がいても、数人の質の高い友人関係しかなくても、実際に孤独感をやわらげる唯一の要因は、友人とより頻繁に会うことなのです。

孤独と不健康を結びつけるメカニズム

イギリスでおこなわれた別の研究では、さまざまな地域における孤独の影響を調査しています。研究者たちは、家族や隣人との接触が少なく、ほかに実際の支援や精神的なサポートを得られない人々の間で孤独感が最も高いことを明らかにしました。こうした孤独感はストレスや不安、うつなどの長期的な問題と関連していることがわかったのです。

この研究では、公園や地元の商店街での友好的な交流といった近所付き合いや、ただ顔を知っているだけの人ではなく、隣人と積極的に知り合いになることが、孤独から身を守るために重要であることを示唆しています。

研究者は、3つのメカニズムが孤独と不健康を結びつけている可能性があると結論づけました。第一に、孤独そのものが身体へのストレス要因であること、第二に、孤独な人は生活の中でほかのストレス要因にうまく対応できないこと、第三に、孤独であることは、危機のときに助けてくれる友人がいるという恩恵を受けられないことを意味します。

笑顔で抱き合う3人の高齢の男性
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