2012年10月19日(金)

<ランチェスター思考>ソフトバンク孫正義社長が武器にする「強者を挫く」戦略 -福田秀人氏

PRESIDENT 2010年11月1日号

著者
福田 秀人 ふくだ・ひでと
ランチェスター戦略学会副会長

福田 秀人元立教大教授。1976年、慶応大大学院商学研究科博士課程修了。会社役員やコンサルタントとしてリーダー教育や組織改革、事業戦略に従事。『ランチェスター思考:競争戦略の基礎』『プロフェッショナルリーダーの教科書』(共著)など著書多数。

ランチェスター戦略学会副会長 福田秀人 構成=面澤淳市 撮影=澁谷高晴

弱者でもこうすれば強者を打ち負かせる

ランチェスター戦略の基本は、次の3つの競争原理の実行である。

(1)ナンバーワン主義
まずマーケットを細分化し、小さくてもナンバーワンになれる得意分野を見つける。そこを起点に、ナンバーワンの領域を広げていくのである。

(2)競争目標と攻撃目標の分離
競争目標は、自社商品よりもシェアが同等かやや上にある商品。一方、攻撃目標は、自社よりもシェアが低い商品の顧客である。

(3)一点集中主義
数ある攻撃目標のなかから一つを選び、持てる力をそこに集中して決定的な実績をあげていく。ここでも自社の次にシェアが低い商品の顧客の奪取が基本となる。

戦略実行に当たって、田岡らが援用したのが前述のランチェスター法則だ。これには「一騎打ちの法則(ランチェスターの1次法則)」と「集団戦闘の法則(ランチェスターの2次法則)」とがある(図参照)。

武器の性能が同じで兵数が異なる東軍(10人)と西軍(7人)が戦うとする。

一騎打ちなら、西軍が東軍に対して、武器の性能を7分の10、つまり約1.4倍以上とすれば勝てる。だが、集団戦闘では、同じケースで49分の100、つまり約2倍以上にしなければならない。ということは、弱者は一騎打ちに持ち込むべきで、逆に強者は集団戦闘を選ぶべきとなるのだ。

もうひとつ大事なことは、集団戦闘では、兵力を分散させると戦闘力が大きく減じてしまうということだ。

こうした法則をビジネス面に応用したのがランチェスター戦略である。田岡らは集団戦闘を「確率戦」とわかりやすく表現し、大意、次のように指摘した。

「弱者は訪問販売などの一騎打ちを原則とし、強者はマス媒体による大量宣伝などの確率戦を原則とすべきだ」

一方で田岡らは、クープマンらのランチェスター戦略モデル式から「市場占拠率目標数値モデル」を導き出した。

40%以上のシェアを絶対目標に掲げよ

ランチェスター戦略では、次のとおり7つのシェア目標値をあげている。これによって企業は、自社商品の目下の位置づけを認識するとともに、今後の目標を設定するのである。

(1)拠点目標値=3% 競合社としては無視されるが、なんとか存在できる比率。
(2)存在目標値=7% 競合社として存在が認められる。
(3)影響目標値=11% 存在がマーケット動向に影響を与え、注目される。
(4)上位目標値=19% 弱者のなかの相対的強者。今後の地位は不安定。
(5)下限目標値=26% 弱者と強者の境目。トップになることもあるが、不安定。
(6)安定目標値=42% 安定的な強者の位置。独走態勢に入る。
(7)上限目標値=74% 絶対的な独走状態。

田岡はこの数値目標をもとに、シェア1位になることと同時に、(6)安定目標値の42%(概算40%)を超えることが大事であると指摘した。それ以下では市場のリーダーといえども不安定な状態にあり、相対的にシェアが高くても利益率が高くなるとは限らない。ところが40%を超えると、規模の経済や情報力、信用力が急速に向上し、利益率が大きく高まる傾向にあると述べている。

田岡によれば、日本生命など日本の業界トップ企業は40%のシェアを絶対目標に据えているところが多い。米GEのポートフォリオ戦略も「競争相手のシェアが40%以上を占め、自社が7%以下しかない商品は撤退すべし」という基準によって運用されていた。

ランチェスター戦略では、以上7つのシェア目標値をステップ・バイ・ステップで上げ、なにがなんでも(5)の下限目標値26%をクリアせよと説いている。それは自社のイニシアチブを失わず、多数のライバルになんとか対抗できる数字だからである。

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