レイ・クロックとの運命の出会い

ユニクロ 柳井正会長兼社長

柳井 レイ・クロックのことを知ったのは一冊の本(『マクドナルド――わが豊穣の人材』ジョン・F・ラブ著)からです。大学を出て、宇部に戻り、父親が設立した衣料品の会社に勤めていた頃でした。本のなかにレイ・クロックの印象的な言葉が載っていて……。

「Be daring(勇気を持って)、Be first(誰よりも先に)、Be different(人と違ったことをする)」

これこそ商売の真髄だと思って、手帳に書き写したのを覚えています。以来、本書(原書タイトルは“GRINDING IT OUT” )を紐解き、レイ・クロック、そして藤田田さん(日本マクドナルド創業者)からは多くのことを学んでいます。

 この本にはレイ・クロックのことだけでなく、アメリカの資本主義、アメリカ社会の自由さも描かれています。例えば、レイ・クロックは52歳という年齢から大きな仕事を始めている。

柳井 そうです。僕もそこに注目しました。ミルクセーキ用ミキサーのセールスをしていた彼はカリフォルニアでマクドナルド兄弟のハンバーガーレストランに出合う。その店の効率性、標準化された作業手順に感心して、自分が全米チェーンにしてやろうと考える。彼は飲食業界の人間ではない。それなのにマクドナルドの可能性を見抜いたわけです。アウトサイダーとしての客観的な目で事業の将来性に注目したのです。

 それこそまさにアメリカンドリームですね。日本で50歳を超えた人が道端のレストランを見ても、なかなか起業には踏み出さない(笑)。