驚きの「大型買収」に真っ先に賛成した柳井さん

――ソフトバンクの社外取締役に藤田さん、柳井さんが入ったのはどういう経緯でしょうか?

 藤田さんは日本を代表するベンチャー企業家ですし、また、ユダヤ的経営を知っている企業家でした。あの頃、日本ではユダヤ的経営について批判的な意見がたくさんあったと思うんです。それなのに藤田さんは堂々と「ユダヤ商法のすばらしさ」を語っていた。勇気のある経営者でした。ですからお願いしました。

――藤田さんは孫さんの依頼に対して、どう応えたのでしょう?
ソフトバンク 孫正義社長

 即決でした。むろん、高校生のときに私が訪ねていったこともよく覚えていて、「僕が孫君のお役に立つのなら喜んでお受けしたい」と。藤田さんは豪快で愉快な方でしょう。役員会で話しだすと止まらないんです。でも、真髄を突くような意見をびしっと発言されていた。

柳井さんは私にとって尊敬する経営者ですから、お願いしました。ただ、柳井さんは現役だし、経営の先頭に立っている方でしょう。逡巡もあったのですが、ソフトバンクにとって必要な方だからどうしても入ってほしかった。

それまでソフトバンクは一般の消費者に直接、商品を売るといった経験は少なかった。しかし、ブロードバンドに進出すると一般消費者を相手にしなくてはならない。それにはユニクロの柳井さんの知恵を借りなきゃいけないと思ったのです。

柳井 ソフトバンクの役員会は活発ですよ。外から見ていると、ソフトバンクという会社は孫さんがひとりで全部決裁しているような印象がある。だが、実際の役員会はみんなが議論して、物事を決めている。ソフトバンクの役員会に出ていると、孫さんは人の意見に耳を傾ける経営者だと感じます。