東山新社長の信頼性を毀損された3つの想定外

被害者数が数百人、数千人になる可能性があると言われる中、これでは、誰も納得しようがありません。特に、東山氏本人の疑惑については、多くの海外メディアも取り上げており、批判がさらに高まりそうな様相です。

今回の会見の最大の誤算は、この会見が、今後、信頼回復の牽引役となるべき東山新社長の信頼性が大いに毀損きそんされてしまう結果になったことではないでしょうか。本来なら、強いリーダーシップを印象付け、再生への道筋を明確に示すことが期待されていたわけですが、結果的には、それはかないませんでした。

そこには3つの「想定外」がありました。まず一つ目が、「本人の性加害疑惑に対する説明のミス」です。

そもそも、東山氏は現所属タレントの中でもジャニーズ最古参であり、ジャニー、ジュリー氏とは最も近しい関係性にあったわけで、性加害を全く知らなかったというのには無理があります。さらに、本人に、そうしたハラスメントのうわさがあることに対して、上手に説明しきれなかったのは致命的でした。

最初は「(性加害は)したことがない」と2回も断言していたのに、記者のしつこい挑発に、

「覚えてないことの方が、多くてですね、もしかしたらしてる可能性もあるし、もしかしたらしてないかもしれないし、ただやっぱりもちろん若気の至りがあったりそのときの自分の幼稚さであったりとか、そういうものもあったとは思うんですね。ただ記憶をたどっても、ちょっと覚えていないことも本当に多くて、僕もそうだと思うんですけど多分、いろんなことやってるんだと思います」

と、半ば認めるような発言を長々としてしまいました。このあたりについては、もう少しマシな回答ができたはずです。

もう一つの「想定外」が、ポジショニング戦略のミスです。そもそも、半ばおずおずと、申し訳なさそうに話すジュリー社長、堂々と自信ありげな東山紀之新社長、そして、子会社の社長で、人柄の良さそうな井ノ原快彦さんがセットで登場したのは、お互いの役割を補完する意味があったのかもしれません。「お母さん」「お父さん」「お兄さん」の「ファミリーセット」で、好感度を上げようとしたのか、硬い印象の東山氏に対し、柔らかい印象の井ノ原氏で、雰囲気を和らげようとしたのかわかりません。

しかし、逆に、イノッチこと井ノ原氏のコミュ巧者ぶりが際立ってしまい、その対比で、東山氏の印象を下げてしまったように感じます。

記者会見するジャニーズ事務所の井ノ原快彦氏=2023年9月7日、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
記者会見するジャニーズ事務所の井ノ原快彦氏=2023年9月7日、東京都千代田区