東日本大震災を上回る規模の「南海トラフ巨大地震」が高確率で発生すると予想されている。そのとき大都市に林立する高層ビルやタワーマンションにはどんな影響があるのか。東京都知事政務担当特別秘書、宮地美陽子さんの著書『首都防衛』(講談社現代新書)より、一部を紹介する――。(第1回/全3回)
夕暮れ時の東京のウォーターフロント高層ビル
写真=iStock.com/Juergen Sack
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タワマンは「長周期地震動」に弱い

大都市には超高層ビルやタワマンが林立し、今や成熟国家の象徴のような存在感を放っている。新築マンションの価格上昇は止まらず、不動産経済研究所が発表した2023年3月の首都圏新築分譲マンション市場動向によれば平均価格は1億4360万円で、統計開始の1973年以来初めて1億円を超え、前年の同じ月の2倍以上に上昇した。ただ、高層の建物は、高い階ほど地震発生時の揺れが大きいという。はたして「高嶺の花」となったタワマンは大丈夫なのか。

超高層ビルやタワマンが最も苦手とするのが「長周期地震動」だ。「周期」とは揺れが1往復するのにかかる時間で、大地震の発生時は長く、ゆっくりとした大きな揺れである「長周期地震動」が発生する。高確率で発生すると予想されるM8~9級の南海トラフ巨大地震が起きれば、その激しい揺れが住民らを襲うことになる。

3.11ではエレベーター全基停止、設備損傷

長周期地震動は、たとえ震源から離れていても高層の建物を大きく、そして長く揺らす。建物の揺れやすい周期(固有周期)と地震波の周期が一致すると共振して揺れが大きくなるわけだが、高層の建物は共振によって低い建物よりも長い時間にわたって揺れるため注意が必要なのだ。

2011年3月の東日本大震災発生時、東西の大都市のランドマークにもなっていた都庁舎、大阪府庁舎が大きな揺れに見舞われた。震源から約400キロ離れた東京都心部は震度5強を記録。東京・新宿にある地上48階、高さ243メートルの都庁第一本庁舎と第二本庁舎(地上34階、高さ163メートル)は地震動でゆっくりと揺れ、エレベーターは全基停止し、天井材の落下やスプリンクラーの損傷などが見られた。