災害に備えるためには何をすればいいのか。災害危機管理アドバイザーの和田隆昌さんは「わざわざ防災用品を買う必要はない。大事なのは『いつ、何が起きてもおかしくない』という考え方をベースに持ち、日々の暮らしの中で防災を意識することだ」という――。(第1回)

※本稿は、和田隆昌『今日から始める生活防災』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。

緊急バッグ
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです

「防災袋を買ったから安心」ではない

NTTドコモが2020年6月に行なった「防災対策に対する意識調査」で、「防災対策はしていない」および「防災対策をどちらかというとしていない」と回答した人の割合は、65.3%にのぼりました。とはいえ災害に備えて、防災グッズや食料・水の備蓄をしている方も多いことと思います。

しかし、防災袋が押し入れの奥にしまい込まれていたり、非常用食料の賞味期限が切れていたりしてはいませんか? 「防災用品」として売られている専用の商品は割高なモノが多いのに、もったいないですよね。それに防災用品を買っただけで安心して、「私は災害に備えている」という気になってしまうことも否定できません。災害はいつ襲ってくるかわかりません。そこが一番怖いところなのです。

ですから、毎日歯を磨くように、顔を洗うように、常に頭の片隅で防災についての意識を保っておくことが大事です。なにも戦時下の国の人たちのように、毎日怯えて暮らせというわけではありません。

家の中の通路に避難時に障害となるモノが置かれていないか、ドアや窓はスムーズに開閉できるかなど、あたり前の住まいの点検をしておくことがいざというときの生死を分けるのです。それは防災だけではなく、日々快適な生活を送ることにも直結しています。

防災用品を用意するより大事なこと

コロナ禍の間に手洗いやうがいが習慣化して、沈静化したといわれる現在でも継続している方、個人の裁量に任されたけれども人込みや店舗ではマスクを着用する方が大勢いらっしゃいます。これは3年にも及んだコロナ禍で習慣化されたからに他なりません。防災も同様に習慣化することが何より重要です。災害から大事な生命と財産を守れるか否かのすべては、個人の心構えにかかっているのです。

災害に見舞われたとき、「なぜ、こんな時間に!」「どうして私が住む地域に!」などと驚いたり、あわてていても始まりません。「いつ、何が起きてもおかしくない」という考え方をベースに持ち、日々の暮らしの中で防災を意識していただきたいと思います。

自動車の教習所や免許センターでは「だろう運転」「かもしれない運転」ということを、教えています。「だろう運転」とは、「この交差点を急に曲がっても大丈夫だろう」などという根拠のない予測に基づいた運転で、「かもしれない運転」とは「もしかしたら子どもが飛び出してくるかもしれない」など、あらゆる可能性を想定した安全な運転のことです。

この「かもしれない運転」の意識をぜひ防災に関しても持っていただきたい。それが「生活防災」の基本です。そして、「防災用品をわざわざ用意する」のではなく、いざというときのために「普段使うものを防災に役立つかどうかという観点を入れて選ぶ」というのが、「生活防災」のために重要な点です。

では具体的な「生活防災」の方法についてご説明していきましょう。