「学校にも家にもいられない」子どもたちの居場所

筆者が個人で知る範囲ではあるが、学童保育のスタッフは子どもたちの楽しい生活時間を守り社会性を養おうとの意欲が高く、「フランス社会に、この人たちがいてくれてよかった」と感じる面が多々ある。特に心強いのは、学童保育が学校でも家庭でも心安らかに過ごせない子どもたちの、重要な居場所になっていることだ。

実際、フランスの学童保育のスタッフたちには、自分自身が学業に失敗したり、家庭環境に恵まれなかった人々も多い。かつて子どもだった自分に安心と遊び、大人の見守りを与えてくれた場所を自分も作りたい、その善意の巡りが支えている場所なのだ。

そしてその場が国と自治体による公共サービスとして運営されている事実には、「子どもは社会で育てる」というフランス社会の理念と姿勢が、強く表れている。

以上、学童保育を日本と異なる考え方で運営し、社会インフラとして機能させているフランスの実例を概観した。

今回の記事では歴史的経緯には触れられなかったが、利用者側の視点から、「日本と違う制度」の大枠をお伝えした。

やり方は異なっても、社会において子どもの生活時間を守る重要性は、どこの国にも共通する。また従事者確保・養成の課題や、小児性加害が起こりやすい温床も、国境を問わず懸念される点だ。

日本の学童保育の今を理解し、これからを考えていくにあたり、拙記事が材料になれば幸甚である。

[参考文献]
Ahmed El Bahri “La Politique éducative locale, Analyse et illustrations” Berger-Levrault, 2022
Caisse Allocation Familiale “Baromètre des temps et activités péri et extrascolaires 2021” L’essentiel No 207, 2022
Ifac, “BAFA”,
Injep “Fréquentation des accueils collectifs de mineurs(accueils de loisirs, colonies de vacances, scoutisme…)en 2020-2021” Fiches repères No 56, 2022
Injep “L’Education populaire en France” Fiches repères No 44, 2019
Mairieinfo “Combien coutent l’enseignement et le périscolaire aux communes et EPCI?” 2019
Ministère de l’éducation nationale, de la jeunesse et des sports “Le Plan mercredi
Observatoire des finances et de la gestions publique locales, “Les coûts locaux de l’éducation, enseignement et périscolaire” Cap sur… No 10, 2019
Onisep “Les diplômes de l’animation” 2019
岩橋恵子「フランスにおける学校支援と青少年の地域公共空間―余暇センター(Centre de loisir)を中心に」2010
大津尚志、橋本一雄、降旗直子「フランスの余暇センターにおける市民性教育」2012

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