出産・育児支援の制度をフル活用できるようにするべき

制度としては、どんな職種でも、労働者の育児休暇などが男女ともに法律で認められています。でも現実には、たとえば数年の任期がついている雇用でそれが利用できるかというと、厳しいかもしれません。実際に十分に利用されていないのは、ご存じの通りです。

ちなみに私の研究室では、常に女性の教員は半分以上おり、今の大学(東京大学)に移ってからの7年で生まれたお子さんは7人、出生率は日本の平均を上回る1.7です。育児などのライフイベントの理由で仕事を辞めた人もいません。これは自慢ではなく、これでもまだ不十分だと思っています。

うまく制度を利用できないのは、少子化で当事者が少なく、休暇を言い出せる雰囲気がないという事情もあります。加えて「自分も苦労して乗り越えてきたのだから、あなたたちも頑張りなさい」のような少し意地悪なお考えの方も少なからずおられるようです。このような子育てを重要視しない空気と苦労を押しつける「負の連鎖――足の引っ張り合い」の結果が、現在の少子化の一因になっているのかもしれません。

子育ての苦労を押しつける「負の連鎖」が起きていないか

逆に、経験者の方々が「自分たちは大変だったから、次の人にはもっと楽に子育てができるように」と少しだけ力を貸してもらえたら、案外簡単に変えられることなのです。特にライフイベントに関わるのは、人生のほんの一時期です。しかしそのときにしかチャンスはないのです。「負の連鎖」を断ち切り、V字回復のイニシアティブ(音頭)を取るのも、まさに「シニアの仕事」です。

日本が世界に誇れることは、かなり減ってきてはいますが、もちろんあります。その一つが、世界一の長寿国だということです。敬老の風土、健康的な食習慣、きれいな生活環境などのおかげでしょう。偶然日本に生まれたということだけで、他国に比べて、より長い人生が持てる可能性があるのです。

2022年9月の総務省の発表によれば65歳以上の方は昨年より6万人増え、過去最多の3627万人。総人口に占める割合も29.1%と過去最高。世界200の国と地域の中で最も高いです(図表3)。仕事に就いている65歳以上の方は909万人で、18年連続で増加し、こちらも過去最多。65歳以上の就業率は25.1%に上り、特に65歳から69歳の就業率は初めて50%を超えたそうです。高齢者の労働意欲は徐々に高まってきているということです。