「勉強ができないのは本人の努力不足」は理不尽

ですから親ほどできない子がいても、親には思いもよらなかった秀才児がいても、何かにすごくこだわりをもった才能を発揮するギフティッド児が生まれても、教科ごとに得意不得意の差が大きい子だとしても、不思議でもなんでもなく、また親の育て方によるとは限らないことを意味します。つまり、そのことが遺伝だといえるのです。

子どもにとっては遺伝要因も家庭要因も、ともに自分ではどうすることもできないガチャ要因です。自分自身の持つ遺伝要因と生まれ落ちた環境によって、あわせて8割から9割が説明されるほどの大きさだというのに、このことがほとんど知らされていない世間では、子どもがお勉強のできない理由を、本人の努力不足や、勉強の仕方、先生の良し悪しといった、もっぱら非共有環境のせいにされています。

これは子どもにとって、きわめて理不尽といわざるをえません。

次の図表3と図表4は、パーソナリティと精神疾患(精神障害)や発達障害の双生児相関と遺伝・共有環境・非共有環境の影響の割合です。

【図表3】パーソナリティと精神障害・発達障害の双生児相関
図表作成=師田吉郎
パーソナリティと精神障害・発達障害の双生児相関
【図表4】パーソナリティと精神障害・発達障害の遺伝と共有環境・非共有環境の影響の割合
図表作成=師田吉郎
パーソナリティと精神障害・発達障害の遺伝と共有環境・非共有環境の影響の割合

パーソナリティは遺伝的な影響が大きい

パーソナリティを測るテストはいろいろ開発されていますが、ここでは私が仲間の研究者たちと行っていた慶應義塾双生児研究プロジェクトに参加してくださった成人ふたごに受けていただいた代表的な2種類(NEO-PI-RとTCI)を取り上げました。また統合失調症やうつのような精神疾患と自閉症やADHD(注意欠陥・多動性障害)のような発達障害は海外の論文から引用したものです。

なかには聞いたことのないようなラベルがついていると思われるかもしれません。たとえば「開拓性」とは興味関心が広くいろんな方向に向かう知的好奇心の強さのこと。また「自己超越性」とは自分を超えた何か大きなもの(たとえば大自然とか宇宙とか神など)を意識しやすい性格のことです。

しかしここではそれぞれの項目の意味はあまり気にしないでくださってけっこうです。これらが知能や学力と明らかに違うところは、二卵性の相関が一卵性の相関の半分かそれ以下で、類似性が遺伝だけで説明できてしまい、共有環境の影響がないか、あっても統合失調症のようにごくわずかだということです。

共有環境がないというのは、とりもなおさず親や家庭の環境からの影響がない、つまり家庭で親の姿を見て学習したり、それを教育したりすることのできないものだということです。これらは学習によって脳の構造やネットワークのつながりが変化することによって生ずるのではなく、その時々に神経と神経の間の情報伝達にかかわる神経伝達物質の種類や量の放出具合に主に左右されるものと考えられます。

これはおそらく多くの人の常識をくつがえすものでしょう。