家族葬や一日葬が増える中、注目集める寺院回帰

かつて日本各地でみられた「寺院葬」を取り戻そうとする動きが、活発化しつつある。主導しているのは、民間企業だ。近年、「葬儀の場」としての寺院は姿を消しつつある。無宗教式の家族葬や一日葬、直葬などの葬送も増えてきている中で、なぜ、あえて「寺院回帰」に向けた取り組みが始まったのか。

お経をあげる僧侶のイメージ
写真=iStock.com/SAND555
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旧来の日本におけるムラ社会のなかでの葬儀の場は「寺」や「自宅」であった。多くの人が自宅で看取られて亡くなり、そして地域の中で弔われたのである。戦後、高度成長期ごろまでは、それが当たり前の風景だった。

しかし、1977(昭和52)年を境にして、自宅死と病院死の割合が逆転。現在では、自宅死は17%にまで落ち込んでいる(厚生労働省「人口動態統計」2021年)。

畳の上で亡くなれば、そのまま自宅やムラの菩提寺で葬儀が営まれた。ムラの共同体が葬儀を取り仕切ったのだ。そして、葬送の中心にいて、あれこれ指示を出し、プロデューサー的な立ち位置にいたのが、菩提寺の住職であった。

だが、全国的に葬儀社が広がりをみせていくと、寺は葬儀から遠ざかっていく。一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会の「葬儀に関するアンケート調査」によれば、1990年では自宅で葬儀を実施した割合が48%、寺院葬が15%程度あった。

だが、2000年代に入って急激にそれらの割合は減っていく。2011年以降は自宅葬・寺院葬ともに5%程度と低水準となっている。対して、葬儀会館での実施割合は86%にまで伸びてきている。都市部での葬儀場は、ほぼすべてが葬儀会館に置き換わったとみてよいだろう。

病院死の場合、いったんは遺体を自宅に戻すのが慣例だ。そこに菩提寺の住職がやってきて枕経を営む。その後、遺体を葬儀会館に移して、通夜や葬儀を済ませる流れである。

現在では、自宅に遺体を戻さないことが多くなっている。マンション住まいの人や都会に済む人にとっては、遺体搬入・搬出時の近隣住民の目が気になるところである。

遺体安置から葬儀会場の飾り付け、納棺、進行、火葬手続きまで、完全なパッケージ商品になっている葬儀社に一任するのが、喪主も寺も楽で合理的だ。葬儀会館は、寺に比べて清潔かつ、エレベーターや空調などが完備していて快適だ。

だが他方で、すべてが葬儀社のスタッフ任せになってしまうことの弊害も生まれている。

てらそうそうの寺院葬の風景
写真提供=しゅうごう
てらそうそうの寺院葬の風景