重要なのは労働環境よりも賃金

「もちろん、それはあるかもしれません。でも実習生から聞く限り、昔に比べて労働環境は改善しています。労働環境が悪いから日本を希望しないのだったら、以前から少ないはずです。私が候補者と話した感じでは、やはり賃金として魅力がなくなっていますね。円安がそれに拍車をかけました。仕送りすると目減りする。私たちは、候補者に為替は変動するから、現時点の為替レートだけで決めないように伝えるんですが、そもそも為替を詳しく知らない候補者もいます。日本の魅力も伝えます。ただ、彼ら、彼女らからすると、出稼ぎなのでお金は重要です」

紙幣を数える手
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氏は最後に、かつて隆盛を極めた日本企業向け接待交際費の予算はほぼなくなったといい、現在は現地ベトナムでの食事くらいは自腹で払っていると教えてくれた。外国人労働者・技能実習生の雇用や受け入れについて研修やコンサルティングを行う関係者は言う。

「これは差別ではないものの、やはり歴然としてアジアの国の地方からやって来る人か都会からやって来る人かでレベルが違うのが現実です。そして日本にやって来る人は地方からが多い。日本の魅力度が低下しているのは事実でしょう。コロナ禍で面接がオンラインになったので見極めも難しいですからね。

またベトナムにはサムスンのように外国から有名企業が進出しているのでベトナム内での知名度が高いんですね。日本はさほど優位性がない。さらに日本に技能実習生として行っても働ける年数が短いでしょう。さらに日本の職場でベトナム人がパワハラを受けた動画が一瞬で拡散されます。あんな酷いことをする日本の職場は一部ですよ。でも、一部でも日本を敬遠するには十分です」

米国は技能実習制度における人権侵害を指摘

2022年9月に日本政府は「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を公開した。私は公開前からこのガイドラインに外国人技能実習生がどう書かれるか、もっといえば否定的に書かれるか注目していた。なぜか。

米国務省は日本の技能実習制度で人権侵害が起きていると指摘するほどだからだ。さらに現在、米国の半導体やIT企業を中心として技能実習生のいる日本の仕入先に実態調査を求めたり、技能実習生に実地ヒアリングを重ねたりしている。理由は、技能実習生が母国の仲介業者に手数料を支払ったかを把握するためだ。

国際規範では労働者からの手数料徴収を禁止しているが、実態としては日本に来るまでに100万円ていどの借金も珍しくない。技能実習生の大半は、やはり稼ぐのが目的だと説明した。それなのに、稼ぐ前に大金を費やしているのが実情だ。そのうえで、米国各社は、実習生が訪日までに支払った手数料を企業が肩代わりすることを求めている。