決して「明らかな誤審」ではない

さらにNPBやMLBでビデオ判定が導入されると、従来タイミング的にアウトとされていた判定の中にも、ビデオで見ればセーフだった事例があることがわかり、プロだけでなくアマの審判もより厳密、厳格にジャッジするようになった。

慶応対横浜戦の件の判定も、タイミング的にはアウトだったのだろうが、最新の知見を得ていた審判は、より厳密に確認してセーフの判定をした可能性がある。

元審判の中には「最近の審判は、見た目だけでなく『音』にも留意している。あの判定では、野手がスパイクで塁に触れた際に出る微細な音が確認できなかったから、セーフにしたのではないか」と言う人もいた。

メットを外して手に持ちながら歩く審判員
写真=iStock.com/sdart
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ともあれ、あのプレーは「明らかな誤審」と断じるような単純なものではなかったのは間違いのないところだ。

野球だけでなくスポーツでは、審判は「マスターオブゲーム」であり、試合においてはすべての権限を有している。それを否定して試合は成り立たない。

リスペクトがあったとは言えない

それを前提にすれば、横浜高校の村田浩明監督の発言は、適切だったとは言いがたい。村田監督は同時に「審判をリスペクトしている」と言ったが、試合直後に、当事者たるチームの監督が、審判の最終判定に対して表明した強い疑念は、その言葉とは裏腹のものだった。

後追いの報道では、村田監督は試合後、審判団に2時間も食い下がったとのことだ。これが選手のお手本と言える態度だろうか?

審判の判定への抗議は認められている。この試合でも控え選手が審判にジャッジについて問いただしている。さらに、審判の資質に疑念があるのなら、各県高野連に公式に異議申し立てをすることも可能だ。場合によっては審判の適格性が審議されることもあるだろう。

しかし、当事者が、目の前のプレーで、自チームに不利な判定をされたからといって執拗しつように抗議することがまかり通れば、試合は成り立たない。

元パシフィック・リーグ審判員で、審判技術委員、日本野球規則委員会委員を歴任した山崎夏生氏はこう語る。

「まずあの二塁での判定を『誤審』だという前提の下に論議されていることに非常に違和感があります。触塁があったか否かは微妙で、NPBのようにリプレイ検証をしても触塁を確認できる絶対的映像が見つかりませんから、判定は覆らないでしょう。何を根拠に『余裕でアウトだった』と決めつけるのか、敗れた監督の言葉にはグッドルーザーとしての潔さも誇りも全く感じられませんでした」