自動車保険の保険金を不正に水増し請求していたビッグモーター。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「同社の純利益は年150億~200億円と推測されるが、今後の業績悪化は必至。命運を握っているのは3メガバンクを含む銀行団の融資動向だ」という――。
2023年7月29日に開店したビッグモーター秋田店。なおこの店の前には元々街路樹や植え込みはない。(写真=掬茶/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)
2023年7月29日に開店したビッグモーター秋田店。なおこの店の前には元々街路樹や植え込みはない。(写真=掬茶/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

四面楚歌のビッグモーターの現状

ビッグモーター(以下、BM)の問題が大きく取り上げられています。修理に預けられた車を故意に傷つけ保険金を多く請求するという詐欺的行為や、店舗前の歩道にある街路樹を枯らせるなど言語道断と言っていい行為を繰り返していたわけで、経営コンサルタントとしてももちろん許せる話ではありません。そして、世間の大きな関心のひとつは、この後、BMの命運はどうなるのかということでしょう。今回は、財務状況などを勘案しながら、今後を占っていきたいと思います。

BMは上場していないため、正確な財務状況は分かりません。ここで説明するのは、あくまでも新聞やテレビで報道されている内容がベースで、その報道内容も推測の域を出ないことをあらかじめご了承ください。

まず、売上高ですが、昨年度で5800億円程度といわれています。そのうちの大半が中古車の販売です。記者会見で兼重宏行社長(当時)が修理部門を「2%程度」という話をしていましたが、売り上げの大部分(9割程度)が中古車販売で、残りが修理や保険販売などと考えられます。

中古車販売の利益率は車によって大きな差があると考えられますが、競争の激しい業界でもあり、おおむね15%から20%前後であると見られます。粗利率がその程度だと仮定すると、ざっくり1000億円程度を全事業から得ていると考えられます。

一方の経費ですが、従業員が正社員5000人、非正規従業員が1000人の合計6000人と同社ホームページにはあります。給料は比較的高いと言われており、正社員の年収が平均800万円、非正規社員の年収が500万円と仮定すれば、450億円程度の人件費がかかっていることになります。

また、よく見かけたテレビCMなど広告宣伝費も膨大な額、おそらく年間で数百億円程度に達するはずです。他に、店の維持費や賃借料、店舗設備などの減価償却費などを考えると、あくまで推測ですが、全体で700億から800億円程度の経費がかかっており、営業利益で200億から300億円程度と推測できます。税金を30%程度と考えると、純利益でざっくり150億円から、200億円程度と考えられ、営業キャッシュフローも同程度だと推測できます。つまり、1年でそれくらいのキャッシュフローは通常の営業活動で稼いでいたということです。