佐々木良昭(ささき・よしあき) 1947年、岩手県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授を経て、東京財団上席研究員および笹川平和財団アドバイザーとなる。『革命と独裁のアラブ』(ダイヤモンド社)など、著書多数。年に10回のペースでアラブ&中東諸国に出向き、フィールドワークを続けている。

トルコと聞いて、「東西の文明が交錯する観光の国」をイメージする方も多いと思うが、実はトルコには、私たちが知らないもう一つの顔がある。

GDPが7%台で推移。富裕層が増加し、たとえば高級外車・フェラーリの予約台数がうなぎ上り。イスタンブールの地価もここ5年間で3倍に急上昇。「第二ボスポラス海峡」の建設計画にともない、海外からの大規模な投資マネーが流入中。

おわかりのように、疲弊する西欧諸国を尻目に、この国は目覚ましい経済発展を遂げているのだ。

中東研究の第一人者・佐々木良昭氏が、本書を通じてその大躍進の背景に迫った。

「有能な労働市場、自由な投資環境、整備されたインフラなど、上昇気流を支える要因は各種あげられますが、特筆されるのが、トルコの地下資源でしょう」

第一次世界大戦終了後、オスマン帝国に代わってトルコ共和国が誕生するに当たり、ヨーロッパ諸国との間に「ローザンヌ秘密協定」が交わされた。トルコは今後100年間、地下資源の開発を行わないというものだ。

「その協定が、2023年には期限切れを迎えるのです。となれば、特にトルコ南東部の豊富な原油や天然ガスが脚光を浴びるはずです」

10年後には、トルコは世界的な資源大国としてクローズアップされる可能性が大きいというのだ。

そしてもう一つ。これからのトルコを予測するうえで軽視することができないのがエルドアン首相の存在だ。

「09年1月にダボスで開催された国際会議の席上で、彼はイスラエルのパレスチナ弾圧を激烈な口調で非難しました。これで男を上げ、彼は今や中東のスーパースターです」

従来は、アラブ&中東に関連した国際会議といえばエジプトのカイロで開かれるのが慣例だったが、今では舞台をトルコのイスタンブールに移している。

では、日本のビジネスマンは、そんなトルコとどう付き合えばいいのか?

「トルコにはオスマン帝国のDNAを感じさせるタフ・ネゴシエーターが多い。

幸いにも親日的な国家なので、パートナーとして非常に心強い存在。中東&アラブ進出の橋頭堡役が期待できます」

本書では、日本人がトルコ人ビジネスマンとパートナーシップを組む際の心構えにも言及している。

※すべて雑誌掲載当時

(工藤憲二=撮影)
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