対話を使って「キャリアの意思」を創る

キャリアについての相談や対話を観察すれば、こうした創発的な効果は随所に見られます。

自己分析のように「じっと手を見る」タイプの振り返りを自力で行っても、キャリアや学びへの「意思」を見つけられる人は少数ですが、他者との対話という相互作用を通すことで、光明が差すようになんらかの「意思」や「思い」が創発されてくる。このことが、「独白(モノローグ)」と「対話(ダイアローグ)の決定的な差です。

対話型ジョブ・マッチングシステムのベースに「対話」を置くべき理由は、どうやって「初動」の意思を発生させるのかに対する答えを、この対話が持つ創発性がもたらしてくれるからに他なりません。

【図表4】対話の即興性と共創性
図版=筆者作成

「対話」の機会を設けている企業は少ない

今、従業員のキャリアについて真剣に考えている先進的な企業から、こうしたビジネスにおける「対話」の効果は少しずつ重要視されるようになってきました。キャリア相談室やキャリア開発室などのキャリア関連組織の設置が進んできました。しかし、「対話」の機会を作るコンサルティング担当者の配置となると6~10%に過ぎず、ここ20年間でほとんど伸びが見られません。こうした機能の増強が、これから従業員のキャリアを本気で考えるには避けて通れない方向性です。

【図表5】企業の人材マネジメントに関する実態調査