子どもとの関係が前進しない原因

ああ、そうか、それは嫌な思いをさせたね。でも堀井さんは警察だけど、捕まえる仕事じゃないよ。子どもの相談を聞く専門職で、辛い思いや寂しい思いをしている子どもを助けるのが仕事なんだよ、捕まえたりするのが仕事じゃないから安心してと伝えましたが、結局その日は会えないまま帰ることとなりました。

それからというもの、会ってくれるかどうかは分からないまま、とにかく何度も学校に足を運びました。なんとなく顔だけは見慣れてきた感じはありましたが、決して心を開いてくれているという関係ではありませんでした。

何とか打破しなければいけません。サポートセンターと子どもが会うことへの保護者の了解は、学校がとっていました。とはいえ、親と私の直接の関係がとれていないことが、この子との関係が前進しない原因ではないかと考えました。

「うちの子は何も変わらんよ」

何とか祖父については、第一関門を突破しました。残されたのは、母親です。

養護の先生からは、あの親はかなり強敵で、敬語で話そうものなら、絶対に関係はつくれませんよと言われました。

私は最初、言われている意味が分かりませんでした。初対面の相手と話すときに敬語を使うことは、常識中の常識です。敬語で話したら嫌われる? どういうこと? 最初からタメ口? どうやって?……と、頭の中は混乱です。

敬語で話したら関係が作れないのなら、とにかく封印するしかありません。しかし開口一番、「サポートセンターの堀井です。あの子のことが心配で、これから私も一緒に考えたいので、関わらせて頂けませんか」と、気づけば敬語のオンパレード。分かっていても修正のしようがありません。

すると案の定、母親からは鼻で笑われ、「あんたなんかが関わったって、うちの子は何も変わらんよ」と言い放たれます。

「うちの子は何も変わらんよ」(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/D-Keine
「うちの子は何も変わらんよ」(※写真はイメージです)