日本で新規ビジネスが立ち上がらない理由

では、どうやって、それほど巨大な新規事業を生み出すのか?

残念ながら、日本企業の新規事業への挑戦は、なかなかうまくいっていません。

市場が成熟してしまっている現在の日本では、ニッチ市場であっても、ほぼ埋まってしまっています。私たちが、「新規事業をやりましょう」と言うと、「新しいビジネスを始める市場なんてあるの?」と聞かれます。「そんな市場はもうない」と思っているのでしょう。

メタバースのように、新技術の登場で新たな市場が生まれることはあります。ただし、その市場が大きく成長するまでには時間がかかります。しかも、それらの新市場がすべて大きく成長するわけでもありません。

通常の新規事業開発では、顧客ニーズから発想するのが基本です。お客様は何を求めているのか、どんなサービスを提供してほしいと思っているのか。それを調べ、それに応える商品やサービスを考えます。「答えはお客様の中にある」と言われます。

しかしながら、あらゆるニーズが満たされている、現在の成熟した日本市場では、その方法が通用しません。お客様の中に答えがないからです。かつて有効であった、「顧客ニーズから新たな事業を発想する」という方法は、効力を失ってしまっているのです。

これが、通常の新規事業開発で生み出された事業が大きく成長しない理由の1つです。

ビジネスウーマン
写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです

社会課題は山積している

顧客ニーズが大幅に減少した日本ですが、その一方で、新たに大きなニーズが生まれています。それが「社会課題」です。

ご存じの通り、日本は社会課題先進国です。少子化、高齢化、経済格差、自然災害、環境汚染、エネルギー不足、労働力不足、医療・介護の問題、インフラの老朽化など、様々な社会課題を抱えています。日本企業の既存事業だけでなく、日本の社会システムも耐用年数を超えてしまっているのです。だから、現代社会に対応できず、歪みが生まれています。

これらの社会課題は、言い換えれば、解決が求められる「社会ニーズ」です。顧客ニーズよりも大きな社会ニーズを満たせば、自然と事業規模も大きくなります。もっと言えば、社会課題が大きくなればなるほど、それを解決するビジネスの事業規模も大きくなります。