「将来もモノを買い続けられるという前提が崩れた以上、それを補う新しい幸福の物語が必要です。私は3つの物語が台頭すると考えていますが、とくに注目しているのは人間関係の中にある物語です。調査にも表れたように、たとえ収入が低くても、家族や友人をつくり、その中で存在を認められれば、幸福を感じます。そこで欠かせないのがコミュニケーション能力。コミュニケーション能力はビジネスでも必要ですが、幸福になる能力として、今後さらに重要性が増すはずです」(袖川氏)

今回の調査からわかったように、もともと上流はコミュニケーション能力が高く、下流は対人関係を苦手とする傾向がある。上流は仮に年収が減ることがあっても、人間関係という保険がある。一方、下流は年収と人間関係の両方が危うい。上流と下流の幸福感格差は、今後ますます開いていくのかもしれない。

※すべて雑誌掲載当時

(右)甲南大学経済学部准教授 森 剛志●1970年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、京都大学大学院博士課程修了(博士号取得)。日本学術振興会特別研究員を経て、現職。主な著書に『日本のお金持ち研究』(共著)など。

(左)電通 ソーシャル・プランニング局プランニングディレクター 袖川芳之
1963年生まれ。京都大学法学部卒業。マーケティングを専門領域とし、電通総研主任研究員、内閣府経済社会総合研究所企画官などを歴任。
(小原孝博、浮田輝雄=撮影)
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