既存のアプリ4つを公式に統合した

――マクドナルドがアプリの運用を始めたのはいつからでしょうか。

【藤本】ガラケー時代の「トクするケータイサイト」をスマホ向けのサービスにしようと公式アプリを開発したのが2010年です。当時の公式アプリはクーポンや店舗検索やプロモーション情報といった機能が中心でした。その後、14年に「マックデリバリーサービス」、15年にお客様アンケートアプリ「KODO」をリリースしました。「モバイルオーダー」も最初は単体のアプリとして2019年に沖縄からサービスの提供を開始し、20年1月に全国でローンチしました。

――モバイルオーダー開始時点でアプリが4つあったのですね。今はすべて公式アプリに統合されています。

【藤本】モバイルオーダーアプリは20年3~4月に統合しました。他のアプリも順次統合して、22年11月にはすべて公式アプリにまとめられました。

【図表】マクドナルド公式アプリ統合の系譜
提供=日本マクドナルド

たとえば同じブランドでも、ショッピングと動画というように完全に違う役割を持ったものなら、別々のアプリにする意味はあると思います。しかしマクドナルドは、お客様にハンバーガーをお買い上げいただいて楽しんでもらうことがすべての着地点です。ならば4つ別々に開くのでなく、一つにまとめたほうがお客様の利便性も向上すると考えました。

「DX」という言葉は使わない

――4つあったものを一つにするとごちゃごちゃして使い勝手が悪くなるおそれもあります。UXで工夫された点はありますか。

【藤本】ボタンの位置や数、フォント数など、できるだけシンプルにすることは意識しました。ただ、UXは当然こだわるものの、アプリの世界だけで考えることはしまぜん。重要なのは店舗体験を含めた全体感。お客様が店舗で実際にどのような体験をするのかというカスタマーエクスペエンスを念頭に置いてデザインしています。

マックの「モバイルオーダー」
提供=日本マクドナルド

さらにエンプロイーエクスペリエンスの視点も欠かせません。モバイルオーダーでクルーのオペレーションの負担が増して良い接客をする余裕がなくなれば、お客様の店舗体験が損なわれかねません。お客様の声だけでなく、店舗からもフィードバックをもらって全体で改善を続けています。

ちなみにマクドナルドでは「DX」という言葉を使っていません。ピープルとデジタルを融合させて、いかにカスタマーセントリックな世界をつくるかが重要だと考えています。