ジャニー喜多川氏の性加害問題も、岸田首相の長男も…

女優・広末涼子のW不倫報道から、週刊文春一強時代の危うさが見えたように思う。

開幕した第35回東京国際映画祭のレッドカーペットに登場した映画「あちらにいる鬼」の広末涼子さん(=2022年10月24日、東京都千代田区の東京ミッドタウン日比谷前)
写真=時事通信フォト
開幕した第35回東京国際映画祭のレッドカーペットに登場した映画「あちらにいる鬼」の広末涼子さん(=2022年10月24日、東京都千代田区の東京ミッドタウン日比谷前)

文春の情報収集力と取材力は、すべてのメディアの中でも群を抜いていることは間違いない。

連続追及している故・ジャニー喜多川氏による少年たちへの性加害問題では、次々に被害を受けた元ジュニアたちの告白をスクープしてきた。ついにはカウアン・オカモト氏のように実名・顔出しで告白してくれる元ジュニアを登場させ、日本外国特派員協会で会見させて、見て見ぬふりをしてきた藤島ジュリー社長を追い詰めている。

追い詰められたのはジャニーズ事務所だけではない。この問題に沈黙してきた新聞、テレビも濃淡はあるが取り上げないわけにはいかなくなった。

さらに文春(6月1日号)は、「岸田一族『首相公邸』大ハシャギ写真」とタイトルを打ち、昨年12月30日に岸田文雄首相の長男で秘書官の翔太郎氏が、親戚たちを公邸に招いて忘年会を開いていたと写真付きで報じた。フライデー(6月16・23日号)も岸田首相が寝間着姿で参加していた「ご満悦写真」を公開した。

当初は軽く考えていた岸田首相だったが、世論調査で支持率が激減したことにあわてて、翔太郎氏を更迭せざるを得なくなったのである。

ジャニー喜多川問題も岸田首相の長男の公邸の私利用も、新聞各紙が取り上げ、多くの社説に週刊文春の名が躍った。

「文春一強時代」に心配な兆しが出ている

この10年間を眺めてみると、スクープは常に文春から放たれてきたといってもいいだろう。新聞もテレビも文春の後追いをするか、黙殺するかしかなかった。

文春はさながら無人の野を行くがごとしである。だが、安倍政権のように一強時代が長く続くと内側から腐食する。メディアに限って、文春に限ってそんなことはないといい切れるのだろうか。

新聞、テレビ、週刊誌を含めた雑誌、将来的にはネットメディアが競い合い、相互に批判し合っていかなくては、この国の言論はやせ細るばかりだと、私は考えている。

文春に対しては厳しいいい方になるが、このところの記事を見ていて、いささか心配な兆しが出ているように思う。

広末涼子のW不倫報道(6月15日号)を見てみよう。広末は1980年、高知県で生まれた。芸能界入りのきっかけは中学2年だった1994年、CMオーディションでグランプリを獲得したことだった。1996年に出演したNTTドコモのCM「広末涼子、ポケベルはじめる」で大ブレイク。ヒロスエブームと呼ばれる社会現象を巻き起こしたといわれている。

1998年には早稲田大学に自己推薦入試で合格。以降、映画『鉄道員』(1999年)や『おくりびと』(2008年)などの話題作に出演した。