日本に明かりが見えてきた

ではなぜこれまで日本の株価は低迷していたのでしょうか。さまざまな理由はありますが、私はひと言で言えば、日本の企業があまりにも“儲からない事業をやり過ぎていた”からだと思います。もちろん、中には非常に高収益の事業をやってきた企業もありますし、大企業の中でも日立やソニーのように思い切って収益が上がる部門に経営資源を集中した企業もあります。そういう企業の株価は、ほぼ例外なく大きく上昇しています。

“GG(爺爺)資本主義”という言葉がありますが、大企業の高齢経営者が旧来の成功体験にとらわれて新しいイノベーションを生み出すことができなかったということは明らかだと思います。加えてデフレが続いたことで製品やサービスの価格をなかなか上げることができなかったということも低迷の大きな理由と言って良いでしょう。少し前まではデフレが諸悪の根源と言われていたのに今は少し物価が上がっただけでインフレは悪といった論調も出ていますが、私は現在の程度の物価上昇は非常に健全なインフレであり、物価と賃金が上がることで企業収益も向上するという良い循環になっていくのではないかと考えています。

階段矢印にサラリーのつづりのアルファベットが並んでいる
写真=iStock.com/AndreyPopov
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結局、企業の収益が上がらなければ次に向けた新しい投資もできなくなってしまいますから、ますます悪循環になってしまいます。そういう意味では私は少し明かりが見えてきたのではないかと思っています。

直近の株価上昇の理由

さて、それではこれからの日本株はどうなっていくのでしょうか。ここ、直近の株価上昇の要因としてはいくつかの理由が挙げられます。

(1)積極的な外国人買い

このところ外人が積極的に日本株を買っています。6月の第1週まで11週連続して買い越しとなっていますが、これはアベノミクス以来9年半ぶりのことです。恐らくその背景にあるのは、日本が長いデフレを脱し、適度なインフレを伴って企業業績が成長していくであろうということを彼らが感じているからでしょう。

(2)バフェット効果

世界最高の投資家と言われているウォーレン・バフェットが今年の4月に2011年以来12年ぶりとなる2度目の来日を果たしました。バフェット氏は3年前から日本の商社株に投資していますが、今回も来日した際に「今後も商社をはじめとする日本株への投資を拡大する」と発言していますし、彼がCEOを務めるバークシャー・ハサウェイの年次総会でも同様の発言をしています。彼の発言は非常に影響力が大きいので、これも一つの理由でしょう。

(3)PBR1倍割れ企業への改善勧告

PBRというのは株価純資産倍率のことで、その会社の1株あたりの純資産に対して株価が何倍くらいになっているかという指標です。この数字が1倍割れということは、企業が保有する資産よりも株価の方が安いということになります。極端なことを言えば、その会社の株を買った途端に会社が解散すると買った金額以上に分配されることがわかっている、ということです。リスクのある株式がこういう状態(資産よりも株価の方が安い)になっているのは通常ではありません。そこで東証は、これらの企業に対して改善勧告を行いました。このアナウンスメント効果は大きいと思います。