2000年以上前の女性もナプキンを使用していた

以上が、月経困難症に悩む近世以前のヨーロッパ人女性が従うべきだとされたアドバイスだった。そこで次に、健康な女性が生理のときにどうしていたかという問題に移ろう。インターネットで見つけた説を信じる(けっして推奨できる習慣ではないが)なら、小さな木片をやわらかい布で包んだものが、原始的なタンポンとしてヒポクラテスの著作に登場するという。可能性はあると思わないかい?

残念ながらこの主張に関しては、おそらく近年の誤解の結果であり、古代の生殖医学を専門とするヘレン・キング教授によって否定されている。タンポンが古代世界で本当に使用されていたとしても、その物的証拠はまったく存在しないのだ。

しかし2000年前の古代ローマの女性が生理の際にナプキンを使用していたことについては、証拠が存在し、この習慣はさらに古い時代にさかのぼる可能性がある。ナプキンをつくるのに、複雑な技術は必要ない。再利用された、あるいは低品質の布を脚の間に固定して経血を吸わせ、その後洗濯してふたたび利用するだけのことだ。

その名は時代とともに変化したが、聖書には「menstruous rag(生理用のぼろ布)」と記されている。一方シェイクスピアの時代のイングランドでは「clout(ぼろ布)」として知られていたことを、中世史家のサラ・リード博士がつきとめた。

ショーツを着ない女性はどうやって布を固定したか

ぼろ布は、女性の下着のなかに詰め込んで使用されたに違いないと思うだろう。それも無理はない。しかし――驚くべきことに――実はショーツは近年の発明品なのだ。1800年以前には、ヨーロッパ人女性の大半はショーツを穿いていなかった。ということは当然、次の質問は、「ぼろ布は、なぜ落ちなかったの?」だ。

イギリスの女王エリザベス1世は黒い絹製ガードルを3枚所有していたことが知られており、彼女はこれを腰に締め、リネン製の生理用ナプキン、あるいは麻布を固定していた。絹製は高価すぎたとしても、同種のものは、さまざまな階層の女たちが広く利用していたことだろう。

別の広く行われていた習慣は、あて布など使わず、着衣にしみ込ませたり床に血液が流れるままにすることだった。現在ではそうする人がほとんどいないのは、おそらく19世紀後半の「バイキン理論」革命のせいだろう。バクテリアやウイルスという恐ろしい存在が知られるようになり、その結果、個人の衛生意識が非常に高まったのだ。そして登場したのが高級石鹸ブランドや初期の制汗剤だ。