「ここで妥協してはいけない」と周囲がたきつける

均等に残すと遺言しても、どうしても異論が出てきます。

「兄さんはマンションを買ったとき援助してもらったじゃないの。息子の学費だって出してもらっている。その分を除いて均等に割るのはおかしいでしょ」
「オレが近くに住んで、よく様子を見に行っていたことは知ってるだろう。母さんはその分を考えてくれたんだ。お前のところは子どももいないし、むしろ均等ならいいじゃないか」
「様子を見に行ったのも、お金を借りに行っただけでしょ」

もともと感情的にならずに相続の話をするのは大変です。そこにそれぞれの配偶者も加わると、「ここで妥協してはいけない」などとたきつけるので、余計厄介なことになります。

こんな調子で相続争いがこじれていくさまを何度も見たせいで、私は子どもに財産など残すものではないと強く思うようになりました。

親の財産を自分の財産のように思っている

高齢のため認知症になった場合は、本人にかわって、子どもが財産の管理を代行する制度があります。

そもそも、今の法体系では、たとえ親から嫌われていようとも、基本的に遺産は子どもが相続することになっています。

親の財産を自分の財産のように思っている子どもも少なくありません。

自分の取り分が増えるように、親の介護費や医療費を節約しようとする場合もあるのです。

「家を売り、自分は3億円の老人ホームに入ろう」と親が考えていても、「財産が減ってしまう」と考え、子どもが反対することもあります。

「3億円の老人ホームに入ろう」と考えていても子どもが反対する(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/byryo
「3億円の老人ホームに入ろう」と考えていても子どもが反対する(※写真はイメージです)

結果、ランクの低いホームに入ることになったり、節約のため子どもとの同居を強いられることも珍しくありません。

不本意ながら子どもと同居することになり、住み慣れた地域を離れ、子どもに遠慮しながら寂しく晩年を過ごした、という話もよく聞きます。