スマホが冷静さを取り戻す時間を奪った

第三に、匿名性が保たれるということがある。自分がだれだか相手にも周囲にも知られないわけだから、自分は安全な場所に身を置きながら人を攻撃できる。

匿名性が攻撃行動を促進するというのは、だれもが経験的に納得できるはずだが、心理学の実験によっても証明されている。

第四に、スマホによって瞬時にネット上で反応できるようになったことがあげられる。パソコンの時代には、ネット環境があっても、家に帰ってパソコンを起動しないと書き込めなかった。そのため、学校や職場で、あるいは帰り道とかで腹立たしいことがあって、「書き込んでやりたい」「こき下ろしてやりたい」という攻撃的衝動に駆られても、その場ではどうにもならず、帰ってからということになる。

だが、家に着くまでに頭が冷えて、「もう、いいや」といった気分になる。あるいは忘れてしまう。パソコンの時代には、いやでも冷静さを取り戻すための時間が与えられていたのである。

ところが、スマホの時代になって、攻撃的な書き込みをしてやりたい衝動に駆られたら、その瞬間に書き込んで発信することができるようになった。冷静な判断抜きに衝動に任せて発信してしまうため、現実的な配慮を欠くことが多く、衝動的かつ攻撃的な発信がそこらじゅうで猛威を振るうようになっている。

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写真=iStock.com/Tero Vesalainen
※写真はイメージです

現実世界でも自己中心的な行動が目立つように

ネット炎上がしばしば話題になるが、そのような衝動的に反応する傾向が、ネットのみならず現実世界でもよくみられるようになってきた。

幼稚園や小学校の運動会などで、わが子や孫の晴れ姿を撮影しようとする保護者たちの最前列の場所取りが過熱化したり、後ろの人に配慮せずに三脚を立てて撮影していてトラブルになったりと、自己中心的な行動が目立つようになってきた。そんななか、学芸会や校内合唱などで、わが子が主役に抜擢されないと、

「なぜ、ウチの子が主役じゃないんですか?」
「どうして、ピアノの担当はウチの子じゃないんですか?」

などとクレームをつける保護者が増えてきたため、幼稚園も学校も、みんなが主役となるような演出に配慮するなどといったおかしなことが起こっている。