横転した車両の中には「遺体の山」ができた

横転した2両から懸命の救助活動が行われたが、NPRによると当局は、新たな生存者の発見には至らなかったと発表した。35度に達する猛暑の中での活動だった。

救急隊員は金属用の切断器具などを投入して必死の活動を展開したが、引き上げられた身体はいずれも息絶えていた。「死者数は一晩中、着実に増えていった」と記事は報じている。線路脇の地面には、白いシートで覆われた数多くの遺体が並べられたという。

オリッサ州の消防局長はAP通信に対し、「これは非常に、非常に悲劇的なこと。これまでのキャリアでこのようなことは、一度たりとも見たことがありません」と語っている。

横転した車両に乗って生き延びた15歳の少年がいる。学校の休みを利用して有名な寺院を参拝する予定だったところ、事故に遭ったという。同行していた10歳の弟は亡くなり、遺体の山から弟の遺体を引きずり出して父親とともに車内から脱出した。

この高校生は、横転したほかの車両の中の様子をウォール・ストリート・ジャーナル紙に語っている。大量に出血した人がいたほか、ある人の腕は切断され、ある人の腹部は切り裂かれていた。

同紙によると近くのイベント施設に仮設の遺体安置所が設けられ、約260体が収容された。遺体の顔写真がプロジェクターで代わる代わる映され、遺族たちはこれを頼りに愛する人の亡骸を探しているという。

インドの鉄道
写真=iStock.com/SJPailkar
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真っ先に救助に向かった村人たち

初期の救助活動を展開したのは、近くに住む村人たちだった。インディアン・エクスプレス紙は、警察と消防の到着が待たれるなか、住民たちが献身的に救助に加わり、遺体の搬出活動を行ったと報じている。

37歳男性は、近くの町でサッカーをしていたところ、サッカーコートにまで轟音が響いてきたという。CNNに対し、「一瞬、地震かと思いました」と驚きを語っている。

ほかの住民とともに事故現場に駆けつけた男性は、携帯の明かりを頼りにすぐさま生存者の捜索を開始した。横転した複数の車両に数百人が取り残され、必死に出口を探していたという。横転により乗降口は上方を向き、闇夜が周囲を覆うなか、自力での脱出は難しい状態だった模様だ。男性たちは28人を救助したと語っている。

ほか、多くの村人たちが音を聞きつけ、救助と避難誘導のため現場に駆けつけたようだ。NPRはインドPTI通信の報道から、生存者の言葉を取り上げている。「私たちを救助しようと、地元の人たちは本当に身を粉にして動いてくれました。救助を手伝い、荷物を回収し、水を分けてくれたのです」

同記事によると、重傷者のうち約200人が大病院に搬送され、これを知った多くの人々が献血のため病院を訪れた。当局は救助隊員1200人を投入し、115台の救急車と50台のバス、45台の救急車両が現場へ向かった。CNNは、医師や必要な薬剤が首都ニューデリーから空輸されたと報じている。