表舞台から姿を消していた翔太郎氏が久しぶりにメディアに登場したのが、サミット閉幕3日後の「文春砲」だった。

岸田首相はただちに翔太郎氏を厳重注意したと表明したものの、首相秘書官を続けさせる意向を示したことで世論の批判は沸騰し、週末の世論調査で内閣支持率は急落。岸田首相は週明けにあわてて翔太郎氏の秘書官更迭を発表し、幕引きを図った。

ここへ襲いかかったのが、写真週刊誌「フライデー」が報じた第二弾だった。なんと大忘年会には翔太郎氏と同世代の従兄弟だけでなく、岸田首相夫妻に加え、首相の兄弟とその配偶者ら親世代も参加していたことが、フライデーが入手した一枚の集合写真で明らかになったのだ。

2023年5月19日、G7広島サミット(1日目)にて、岸田文雄内閣総理大臣による、G7首脳に対するおもてなしの一環として行われたワーキング・ランチ
2023年5月19日、G7広島サミット(1日目)にて、岸田文雄内閣総理大臣による、G7首脳に対するおもてなしの一環として行われたワーキング・ランチ(写真=Government of Japan/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

保身のために長男をかばう岸田首相

総勢18人の岸田一族に囲まれ、裸足に寝間着姿でご満悦の表情を浮かべる岸田首相と、その隣で微笑む裕子夫人――。首相公邸での集合写真は、この大忘年会の主催者が長男翔太郎氏ではなく、岸田首相自身ではないかという強い疑念を惹起させたのである。

なぜ翔太郎氏は更迭されなければならなかったのか。むしろ更迭されるべきは親戚一同を招集した岸田首相ではないのか。

岸田首相は第1弾の文春砲の後、自らの関与について国会で「顔は出して、あいさつはした」と答弁していた。翔太郎氏を更迭する理由については「公邸での行動が不適切であり、けじめをつけるために交代させる」としていた。

誰もがこの説明を聞いて「翔太郎氏が同世代の従兄弟たちを首相公邸に招いて忘年会を主催し、岸田首相はそこへ少し顔を出してあいさつをしただけ」と錯覚したことだろう。

フライデーの第2弾はその幻想を打ち砕いた。岸田首相は、息子に全責任を転嫁するため、国会でウソの答弁をしたのではないか――。岸田首相はフライデーの第2弾を受け、一転して「年末に親族と食事をともにした」と認めたうえで、「公邸の中には私的スペースと公的スペースがある。その私的スペースで親族と同席した」と釈明した。

翔太郎氏ら子世代は公的スペースの赤絨毯の階段で悪ふざけをしたからアウト、自分たち親世代は私的スペースで宴会しただけだからセーフ、と言いたいのだろう。

守り切れないと分かれば、全責任を負わせて切る

しかしこの釈明には決定的な欠陥がある。翔太郎氏は忘年会の途中で子世代を引き連れて首相公邸の公的スペースを案内した。そこで従兄弟たちが羽目を外したのであって、翔太郎氏自身が赤絨毯の階段に寝そべったわけではない。翔太郎氏が問われたのは「管理不行き届き」の責任なのだ。

私的スペースで岸田首相ら親世代が宴会を続けていた時、翔太郎氏ら子世代が公的スペースに向かったことを知らなかったとは思えない。仮に知らなかったとしても、管理不行き届きの責任を負うべきは、首相公邸の主として大忘年会を主催した岸田首相本人であろう。どう考えても長男更迭のブーメランは首相自身に跳ね返ってくる。