「あの安倍さんの、奈良の何とかさんと同じでしょう」

木村容疑者の父方の祖母の家を訪ねると、彼の実父が出てきたそうだ。

「そう、隆二の父親、何も話すことなんかないからね。隆ちゃんも、もう大人だから。本人がやったことでしょ。なんで親のところに来んの? あなたも人の子だったら、こんなときの親の気持ちぐらい分かるでしょ。仕事なのはわかるけど」

――そんなことをするようなお子さんではなかったと話す人も多いのですが。

「やっちゃったんだから、そんなことするようなお子さんだったんだよ。あの安倍さんの、奈良の何とかさんと同じでしょう」

容疑者の自宅近隣の取材では、両親は5年ほど前から別居中とも、すでに離婚したとも囁かれていたが、それゆえか、どこか他人事のような突き放す口調だ。

――ネット上に隆二さんについて様々なことが書かれている。事実を確認したい。

「ネットなんか誹謗中傷を好きに書いたらいいよ。それで死んじゃうだけなんだから。プロレスの(木村)花さんていたでしょ。ネットの書き込みで死んじゃった。あいつが何を考えていたかなんて知らないよ。隆ちゃんに聞いてよ」

戦後77年間ほとんどなかった暗殺事件が立て続けに

――やはり心配ですか?

「心配じゃないわけないでしょ。こんな状況で、親なんだから。でも、事件のことなんて聞かれても、分かるわけないじゃん。あっちの家のことなんだから。(中略)

朱に交われば赤くなるっていうでしょ。ごんたくれ(関西の方言で不良の意)はごんたくれと一緒におるし、東大行くような奴は東大行くような奴と一緒におる。周りから変わるんよ。外の力って案外大きいから。だいたい爆弾なんて普段作らないよ。あんた、爆弾作ろうって思ったことある? 俺はそんなこと一度も考えたことないよ。だから、本人に聞いてよ」

そして冒頭のように「一億分の二だよ」といったというのだ。

戦後77年がたったが、安倍元首相暗殺事件が起こるまで、現職の大物政治家を狙った暗殺事件は、1960年10月に起きた浅沼稲次郎社会党党首刺殺事件と、2007年4月に伊藤一長長崎市長が市長選の選挙運動中に暴力団幹部に銃撃され死亡した事件しかなかったと記憶している。

暗がりで刃渡りの長い包丁を持つ人
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それが、7月に安倍元首相暗殺事件が起こり、それからわずか9カ月後に、現職の岸田首相が狙われる事件が起きたのだ。

山上被告は、母親から財産を奪い、自分たち子どもたちの生活を困窮させた統一教会に恨みを持っていたが、その教団ではなく、そこと関わりが深いという理由で安倍元首相を狙撃した。