国産天然ガスで得する国民はひと握り

そんな中、話題となっているのは、千葉県茂原市周辺のガス料金である。大多喜ガス(茂原市)が地元で採取される天然ガスを活用して供給しているため、料金の変動が少ないうえに、東京都内と比べて6割程度の料金に抑えられているというのだ。

しかし、残念ながら、20年度におけるわが国の天然ガスの輸入依存度は、97.9%に達する。国産天然ガスの「ご利益りやく」にあずかる国民は、ごく限られているのである。

このような事情から、日本においては、都市ガス料金の値上げに対して有効な対策を講じることは難しい。しかも、都市ガスの場合には、電気と比べても対策を困難にする独特の事情がある。

現在、旧一般電気事業者10社のうち7社が料金値上げを申請し、その審査が行われている。つまり、3社は値上げを申請していないわけであるが、それは、関西電力、九州電力、および中部電力である。

これらのうち関西電力と九州電力については、複数の原子力発電所を再稼働させており、火力発電のウエイトが低いことが値上げ回避の理由だとされている。要するに、電気の場合には、原子力や再生可能エネルギーを使って火力発電と異なる形で供給を行えば、天然ガス価格や石炭価格の急騰の影響を減じることができるのである。

「料金は海外次第」から抜け出せるか

一方、都市ガスの場合には、この方策はとれない。都市ガス事業が供給するのは天然ガスのみであり、天然ガスの国際価格の急騰の影響をモロに受けざるをえないのである。

今年にはいって、歴史的な暖冬の影響もあって、国際的な天然ガス価格や石炭価格は下落した。しかし、コロナ禍で停滞していた中国経済が本格的な回復に向かうなど、今後、化石燃料価格が再び高騰する可能性は十分に存在する。

このような不確実な状況下で、日本が、ガス料金は国際的な天然ガス価格次第という従属変数的な窮地から脱出する道はないのだろうか。そのための秘策は、ないことはない。それは、デンマーク式の「セクターカップリング」を導入・普及することである。