そこには、“黒船組”と国内勢に挟まれて、もがくZHDの苦悩ぶりをみるようだった。

そして、GYAO!は、多くのユーザーを抱えているにもかかわらず、18年の歴史に幕を閉じることになったのである。

スマホ特化型のショート動画に集約

ZHDが、GYAO!に代えて、動画サービスの開発資源を集約すると宣言したのが、スマホ向けに特化した縦型ショート動画共有サービス「LINE VOOM」だ。新たな挑戦である。

この分野では、TikTokが、数年前から10代や20代のユーザーを中心に人気を集め、またたく間に世界中に普及した。

その特徴は、スマホの縦長画面を生かして、手に持ったままフル画面で視聴できる縦型動画の形態にある。

FacebookやYouTubeなどSNSアプリのアイコンが並んだスマホの画面
写真=iStock.com/stnazkul
※写真はイメージです

また、YouTubeなどに比べて動画が短尺のため、短い時間で気軽に利用できるのも大きい。

さらに、動画を作成してすぐに投稿できる仕掛けも広く受け入れられた。AIを活用して、利用者の好みに合わせて動画を提供するレコメンド(おすすめ)機能も秀逸とされる。

ただ、TikTokは、利用者情報の取り扱いをめぐって物議を醸し、米国や欧州各国は、中国政府が利用者の情報を不当に入手する恐れがあるとして、安全保障上の観点から警鐘を鳴らし続けている。

「LINE版TikTok」は成功できるのか

川邊社長は「新しい動画サービスは、日本の個人情報保護法に則して、個人情報を利活用するので、安心して使ってほしい」と強調。「安全」と「安心」を訴えれば勝負できると踏んでいるようにみえる。

だが、同様の動画サービスは、インスタグラムなどでも広く提供されており、9000万ユーザーを抱えるLINEでも、割って入るのは容易ではない。利用者を引き付ける魅力的な仕掛けを用意できるかどうかは未知数だ。

動画ビジネスは、これからもさまざまなサービスが登場するとみられるだけに、熾烈しれつなサバイバル戦が続きそうだ。

ZHDは、今後のネット事業の中核となるとみられる動画戦略の抜本的転換に踏み切ったが、展開の早いネット業界では、一つのつまずきが企業自体の存廃に関わる事態に発展するケースは少なくない。

ZHDの選択が結果を出せるかどうか。ZHDの行く末は、国内のネット業界に大きな影響を与えるに違いない。

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